ファンを増やすために必要なものはなにか?人が人を応援したくなる4つの要素とその探し方

「アイドルグループが好きすぎて、同じCDを毎回5枚ずつ買ってます!」
「地元のチームの試合はアウェーでも全試合見に行っています」
「このアニメの主人公のグッズを買いすぎて祭壇みたいになってます」
人が何かを好きになったり、応援したくなったときのパワーはすさまじいものがあります。皆様の周りにもこういった熱狂的な推し活を行っている人たちがいらっしゃるのではないでしょうか?
一昔前は”オタク”と呼ばれて少し遠巻きに見られていたものが、いまでは”推し活”と表現されてすっかり市民権を得るようになりました。最近の推し活の経済力はすさまじく、Z世代の3人に1人は推し活を行っているという調査結果もあります。この推し活の勢いは物質的な満足感を実現した現代社会において、精神的な満足感を求めて今後さらに加速していくとものと思われます。
参考:日経クロストレンド(https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00570/00006/)

では、そんな推し活の対象となるアイドル※は、なぜそこまで熱狂的に応援されるのでしょうか?今回の記事ではそんなアイドルになるために必要な4つの要素と、その要素を広めてファンを獲得するにはどうしたらよいかについて考えてみたいと思います。
(※)本来の「偶像」や「崇拝される人・もの」という意味で、この記事では歌手・アーティスト・スポーツチーム・アニメの主人公なども全てアイドルと呼んでいます。
「好き」と「応援したい」は違う
まず、この後の話を整理しやすくするために「好き」と「応援したい」の違いについて区別をしておきます。
結論として、この記事では
・「好き」とは対象物に対して心地よさや快楽を感じる消費者目線の受動的な感情
・「応援したい」とは対象物に対して強い共感を持って自分事化する生産者目線の能動的な感情
であると定義します。
「好き」から生まれる行動には『アイドルの曲を聞く』や『アイドルのグッズを購入する』や『アイドルの試合を見に行く』などがあると思います。一方で、「応援したい」から生まれる行動には『アイドルを多くの人に知ってもらうために情報発信する』や『アイドルともっと長く一緒にいるためにどこにでもついていく』や『アイドルの活動環境を改善するために支援を行う』といったものがあります。
これらの「応援したい」からくる一連の行動は、アイドルのことを自分事化した結果生まれたものであり、献身的なもの=愛です。アイドルの活動は、こういった「応援したい」ファンを増やしていくことによって影響力を増していきます。
もちろん「好き」の延長線上に「応援したい」があるので、ファンを獲得するためにはまずは「好き」になってもらうことが重要です。「好き」になってくれている人たちの中から「応援したい」と思ってくれる人たちを育てていくイメージです。「好き」になるアイドルはたくさん現れるかと思いますが、「応援したい」と思えるアイドルはごくまれにしか現れないのではないでしょうか?ここをレベルアップさせていくのがファンマーケティングの根幹となる考え方です。

「応援したい」と思われるために必要な4つの要素=コアバリュー
では、そんな「応援したい」と思ってくれるファンが生まれるための条件について考えていきましょう。熱狂的に応援されているアイドルには、必ず4つの要素=コアバリューをもっています。コアバリューとは、「顔がかわいい/かっこいい」や「歌/プレーがうまい」といった表面的な要素ではなく、「考え方に共感できる」や「将来に希望が持てる」などのアイドルが持つ真の魅力のことを指します。つまり、そのファンが心の底でアイドルに対して期待していることです。
コアバリューを持ち、適切な形で発信を続けていくことでファンから「好き」を超えた「応援したい」を引き出すことができるようになります。熱狂的なファンを持つアイドルは、みなこのコアバリューを持っているといってよいでしょう。
そんなコアバリューには、大きく分けて以下の4つの要素があります。
・一生懸命で誠実であること
・納得感のある主義・主張があること
・伸びしろがあること
・意外な一面を持っていること
順番に細かく深堀をしていきましょう。

一生懸命で誠実であること
何かの物事に必死に打ち込み、そこに嘘が無いことはアイドルが応援されるうえで欠かせません。多くのリソースをかけて何かに打ち込んでいたり、常に遠い何かを追い求めているアイドルのことをファンは応援したくなります。
例えば、日本のYouTube界で黎明期から活動を続け、YouTuberの先駆者となった『HIKAKIN』などはわかりやすいでしょう。編集技術や企画の面白さももちろんありますが、彼が長く愛され続けている理由には「一生懸命で誠実な姿勢」があります。高いクオリティの動画を毎日投稿していく制作に対する真摯な姿勢や、町で出会った視聴者とのコミュニケーションにおける丁寧さは多くのファンに支持されています。地道に努力しすべての物事に誠実に向き合う姿勢こそが、彼が応援され続ける源泉になっています。
この「一生懸命で誠実であること」が欠けてしまっては他の要素を持っていたとしても決して応援されることはありません。4つのコアバリューの中で、多くのファンから応援されるためには、「一生懸命で誠実であること」は最も根源的で最も重要な要素と言るでしょう。
納得感のある主義・主張があること
人の心は一貫性のあるものや納得感のあるものにしか動きません。そのアイドルが持つ主義や主張が納得感のあるものであり、かつ一貫して守られていることも応援されるうえで重要な要素です。
例えば、環境保護を企業理念として掲げる『Patagonia』というアウトドアブランドがあります。この会社は環境にやさしい製品の製造だけではなく、リサイクル素材を使ったり中古品の修理サービスを展開していたりします。さらにこの環境保護のメッセージ性を強めるものとして、会社の売上より地球環境の保全を重視するという信念のもと、ブラックフライデーセールを拒否することもありました。
こうした強い主義・主張のもとに一貫性のある行動をとることで、ファンはアイドルに対して信頼や安心感を覚えます。さらに、その主義・主張が自身のものと同一もしくは近しいものであれば自己アイデンティティとの親和性が高まり、帰属意識も芽生えてきます。帰属意識の芽生えたファンと一貫性を持つアイドルの間には非常に強固な絆が生まれ、家族同然の接し方をしてくれるようになるでしょう。
伸びしろがあること
人は、既に完成されているものや完璧なものよりも、少し欠点があったり成長途中のものを好みます。発展途上のものには期待感であったり、驚きといった意外性が内包されているからです。
例えば、『AKB48』は非常に良い例でしょう。デビュー当時は技術やパフォーマンスでまだまだ未熟なメンバーがたくさんいた中で、一生懸命に活動を続ける姿に多くのファンが生まれました。小さな劇場からショッピングモール、ライブ会場を経てドーム公演を行い国内でも有数のアイドルグループへと成長。そんな彼女たちの挑戦や成長する姿に、ファンの応援はどんどん強化されていったわけです。
一方で、既に完成に近いようなアイドルは、ファンにとっては「遠い存在」に感じられることが多いです。言葉としては「共感・応援」というより「尊敬・鑑賞」という方が近いかもしれません。これはこれで悪いことではもちろんないですが、強く応援されるためにはやはり伸びしろを感じさせることが必要になってくるでしょう。
意外な一面を持っていること
これに関しては必須というわけではないですが、あるとより人を惹き付けることができる、という要素と言えます。意外な一面(所謂ギャップ)を持つことで、そのアイドルの理解に深みがもたらされます。
例えば、『錦織 圭』というテニスプレイヤーがいます。記者会見やテレビで見る彼の姿は”穏やかで気の良さそうなお兄さん”という印象を与えますが、ひとたび試合が始まるとその印象は一変します。闘志をむき出しに、勝利に飢えながらプレーするその姿に観客はギャップを感じ驚きます。この驚きがなぜ応援に繋がるのかというと、「普段はあんなに穏やかなのに勝つためにこんなに努力をしているんだ」と見えるからです。 見た目や性格に反する意外な一面を持つことで、ファンはそのアイドルの持つ多面性に惹かれ、より親しみを感じて応援しやすくなります。もちろん、先述の主義・主張に一貫性の取れない意外性は逆効果ですが。
コアバリューを受け止めてもらうためのコンテクスト

ここまでで、応援されるために必要な4つのコアバリューについて解説してきました。ここからは、このコアバリューをどのようにして表現し、世の中に発信していくか?について考えていきたいと思います。
コアバリューの表現は全体感を持って行う必要があります。現代の情報社会では、あらゆるメディアで簡単に発信ができる一方で、ばらばらなメッセージが発信されると受け手側に混乱を招き、結果的に信頼を失ってしまう可能性があります。
まずはアイドルの持つコアバリューを整理し一つの情報にまとめる必要があります。我々はこのまとめられた情報を”コンテクスト”と呼んでいます。
”コンテクスト”とは、情報やメッセージが伝えられる際の背景や文脈を指します。発信する4つのコアバリューを一つのコンテクストにまとめることで、様々な媒体を通じても一貫性を保ちながら、ブレない強いメッセージを届けることができます。これにより、どのような手段で情報を発信しても受け手に深い共感を与え、信頼性を高めることが可能になります。
つまり、ピンポイントで個別の発信を行うのではなく「まとまった情報であるコンテクスト受け取ってもらえるように、戦略的に個々の発信を連動させていく」ということがファンを増やすためには重要となります。
コンテクストを発信するための媒体は、SNSやYouTubeといったものだけでなく、Webサイト、服装、グッズ、ライブの演出、パンフレット、プロモーションキャンペーン…と無限に存在します。
アイドルの持つコアバリューをコンテクストに変えて、それを様々な媒体を通じて世間に発信していく。これこそがファンを獲得するために必要なファンマーケティングだと我々は考えています。
どうやってコアバリューを見つけるのか?
ここまで、コアバリューこそが応援されるための重要なポイントであると説明してきました。では、そのコアバリューはどのようにして見つければよいのでしょうか?コアバリューを見つけるために、最も正確なのは応援してくれているファンに聞いてみることです。
アイドル自身や運営側が思っている「私たちのいいところはこんなところ!」というものはもちろん抑えるべきですが、ファンから見てみたら別の魅力に惹かれていたということも多々あります。
ファンの方々がどこに魅力を感じて応援してくれているのか?これを深堀して見ることで新たな発見やアイデアのヒントが生まれてくることは間違いありません。しかし一方で、なかなか難しい作業であることも確かです。ここで引き出すべきは、「なぜ好きなのか?」ではなく「なぜ応援しているのか?」ということ。ファンの心の奥底に眠る意識していない潜在的な感情までも引き出さなければいけません。
我々はこの潜在的な感情を引き出すために、『共創型ワークショップ』というものを推奨しています。『共創型ワークショップ』とは、応援される側であるアイドル(その関係者)と応援しているファンが同じ場所に集まり議論ではなく対話を行うことで、ファンが魅力に感じているアイドルのコアバリューを引き出していくワークショップです。
ワールドカフェやブレインストーミング、ゲームストーミングといった様々な手法を駆使しながらファンと対話していくことで、今まで考えたこともなかったようなコアバリューの発見だけでなく、プロモーションやキャンペーンの施策や商品開発のアイデアが豊富に生まれてきます。
「頑張っているのになかなかファンが増えてこない…」「情報発信を積極的にしろとは言うけど、どんな情報が求められているのかわからない…」「とりあえず作りやすいグッズを展開しているけど、このままじゃ他のと似たような感じになって埋もれちゃう…」といったお困りをお持ちの方は、ぜひこの『共創型ワークショップ』を通じてファンの理解に立ち返ってみてはいかがでしょうか?
弊社ではファンマーケティングのご支援のファーストステップとして、この『共創型ワークショップ』をご提供しております。ワークショップにご参加いただけるファンの方のリクルートだけをしていただければ、当日の運営や情報のまとめなどはまるごと弊社にお任せいただけますので、最低限のご負担でファンが感じている魅力を発掘することができます。ご興味をお持ちでしたら、お気軽にお問合せください。