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私たちが取り組んでいること

【消費者を理解するとは】第5回:真のコストパフォーマンスに目覚める消費者

2020.08.07 コプロの視点

 こんにちは。コプロシステムの吉田です。
 2020年になってすぐ、新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、世界は大きな社会変容の只中にあります。コロナによって変容する社会についても今後考えてみたいのですが、今回はコロナウイルス以前の世界を少し遡って振り返ってみたいと思います。
 
 

新しい先進技術が生活に密着した2010年代

 日本でスマートフォンが普及し始めた2010年代の初めから現在に至るまで、約10年の間に様々なことが変化しました。SNSの普及、オンラインショッピングの拡大、様々なシェアリングサービスの登場など、便利なサービスが一気に身近になり、個人の生活や考え方が変わるきっかけが増えただけでなく、多様な選択肢が生まれた10年間といえます。
 
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 今やスマートフォンだけで、生活のたいていのことはできてしまいます。
 情報通信白書(平成30年)によれば、2017年時点の調査で、スマートフォンの世帯保有率がPCと固定電話を上回り(75%)*1、名実ともに最も利用される機器になりました。音楽、ゲーム、写真・動画のコンテンツなど、エンターテインメントの利用、スケジュール管理や予約、決済サービスの利用などの日常の生活の利便性向上や、仕事なども内容によっては対応できるため、一つの機器を使って様々なことを同時に行うことが可能になりました。
*1出典:総務省『令和元年板 情報通信白書』第2部 第3章 第2節ICTサービスの利用動向(1)情報通信機器の保有状況 2017年では、PC(73%)、固定電話(71%)と昨年と比べ微減となり、スマートフォンと順位が入れ替わった。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd232110.html
 
 

一方で消費は堅実な方向へ

 その一方で、消費の成長は一進一退の状況が続きました。特に2010年代は地震、豪雨や台風など、日本各地で災害による被害が頻発したことや、二度の消費税増税などを通じて、消費のマインドが緩む状況が長期的に生まれにくい状況が続きました。
 
 さらに、2020年に入って以降、新型コロナウイルス感染症による影響は、1-3月期、4-6月期の経済活動を大きく停滞させ、私たちの生活はさらなる精神的にも経済的にも緊張状態が続いています。 
 
 社会情勢を含めた生活全体への影響を伴う出来事が10年単位で断続的に起こったこともあって、消費者の暮らしはシンプルに、必要なものを持続的に利用できる状況が好まれるようになりました。
 
 世界でもこの10年は大きな変化がありました。
 2008年の世界的な金融危機以降、ミレニアル世代を中心に消費への見直し機運が生まれ、価値観にも変化が生まれました。モノの低価格化やSNS・インターネットによる情報の広がりも手伝って、モノそのものへの飽和感がさらに加速しました。
 
 環境問題やエコ、サスティナブル(持続性)など、大量消費やムダを省き、生活環境を持続させていくという考え方もこの10年で浸透しました。結果的に、堅実志向が強まった時代だったと考えられます。
 
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 この10年で、日本の景気動向自体は上向きにはなってきましたが、世帯消費動向指数*1では、上昇傾向には至っておらず、2000年初頭から比べると減少傾向にあるのが現状です*2。こうした中、消費動向の停滞と消費マインドの変化に伴って、コストパフォーマンスのよい商品や効率を重視した商品・サービスが伸長してきました。
 
 100円均一ショップや低価格を重視したショップ、Amazonや楽天などのECサービス、日本発のフリマアプリ「メルカリ」など、低価格であることや、個人間の取引も含めて、モノやサービスの購入の仕組みや購買行動が様々な業界で様変わりを始めました。その中で、従来のただ買う・所有するという枠だけではなく、共有やレンタルなど誰かのモノを共用することで、使うために買うことのムダを減らす「シェア」の合理性が注目され、その考え方も広がっていきました。
 
 そういう意味では、ただ堅実志向が進んだというよりも、購入や所有そのものをゴールとしない新たな価値「体験」がクローズアップされた時代といえるのかもしれません。
*1出典;総務省統計局:世帯消費動向指数(CTIミクロ) 2018年より家計消費指数は、世帯消費動向指数へ変更されている。
*2出典:総務省統計局:家計消費指数からの連続推移による。https://www.stat.go.jp/data/gousei/soku15/index.html
 
 

シェアが消費の意味を変え、生活の変化を生み出す

 

 先に挙げたシェアという考え方、あるいはシェアをする・しあうという価値観が多くの人に許容されたことは、消費やライフスタイルの変化、さらには社会や経済においても大きな変化となりました。
 
 必要な時に必要なだけ利用するシェアリングサービスや月の出費を抑えることができるサブスクリプションサービスなど、本来かかるはずのコストを低減したり、月額制とすることで個人消費の波を安定化することにつながっています。これによって、今までよりもコストを抑えながら生活を充実させたり、浮いたコストをほかのモノに回すことで今までより充実させることもできます。こうした消費の変化は、自分の生活全体を見直すためのきっかけにもなりました。
 
 そうすると、日々の生活の中でやるべきこと、やらなくても良いことを取捨選択することも、より快適な生活を送る上では重要になってきます。自分に合った暮らしを求めて、お金や時間は使うべきところに使い、生活に必要な最低限のものはできるだけ支出を抑える。時短やライフハックといった、生活全体における消費バランスを整える工夫などが取り上げられたり、いわゆるワークライフバランスも大きく注目されるようになってきました。
 
 日本銀行の調査によると、生活のゆとりが出てきたと回答する割合の推移は、2019年はやや減退傾向にはなったものの、この10年の間では、微増傾向が続いています*1。 消費動向が大きく上昇していかない中でも、全体の生活水準を維持しつつ、見通しを立ててできる範囲で消費を行う、コストパフォーマンス自体を洗練させていくような生活を意識している人が増えているように思います。
 
*1出典:日本銀行:生活意識に関するアンケート調査(時系列)
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/survey03.csv
 
 

コストパフォーマンス重視で消費が最適化されていく

 

 消費者が自身の生活ややりたいことに合わせて工夫していくことで、コストパフォーマンスを重視した消費は、より合理的・効率的な方向へ進化していると考えられます。商品を生み出すための様々なテクノロジーや研究、サプライチェーンの進化による企業側の商品提供力の進化の力はもちろん大きいのですが、それ以上に消費者にとって大きな要因となっているものが情報です。
 
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 検討時の事前情報が大量にある中で、すでに使った人のレビューなども簡単に手に入れられるため、消費者の商品選びの目線は、以前に比べてより厳しくなっていますが、それだけ本当に必要なものへの消費が可能になっています。
 
 時間の回(第3回:ユーザー動向の変化は、時間の奪い合いによって起きている。)でも触れましたが、今はスマートフォンで何でもできる時代。限られた時間内に何をどう使うかが生活において極めて重要です。日常生活をこなしていく中で、コストパフォーマンスを意識しているのはもはや消費行動だけではありません。
 
 消費者の生活全体を見ながら、どのような考え方で、どのような生活行動を行っているかをより広範に見なければ、気づけば生活の変化は単純な商品のスイッチだけにとどまりません。コロナによって大きく生活が変容する今、一日の間に行っている行動だけでなく、やりたいことや目指している暮らしなど、消費者が本当に望んでいる生活を知るためには、より大きな視点で消費者を捉えることが、改めて重要になっている時期なのかもしれません。
 
 
次回はついに最終回!第1回目から見たい方はこちら!➡【消費者を理解するとは】第1回:ブランドイメージとはなにか

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