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私たちが取り組んでいること

【消費者を理解するとは】第4回:「〜離れ」と二極化・最適化

2020.07.02 コプロの視点

 こんにちは。コプロシステムの吉田です。
 「消費者理解」について全7回でお伝えしていく本シリーズですが、今回で第4回目。「~離れ」という視点からお話したいと思います。
 
第1回から読みたい方はこちら!➡【消費者を理解するとは】第1回:ブランドイメージとはなにか
 
 
 
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スマホに吸い上げられる支出

 気がつけば「若者の◯◯離れ」という言葉もいろいろなモノに使われすぎていい加減聞き飽きてしまいました。古くは「活字離れ」などから始まり、それから長い間、若者はいろいろなものから離れ続けているようです。自動車やお酒、旅行、テレビ、映画など、多くのものがそう言われ続けている一方で、若年層の取り込みに苦労し続けている企業も多いことと思います。
 
 日本市場においては、大前提としてそもそも人口という絶対数の減少に加え、生涯賃金などの所得減少の問題が大きな要因として挙げられますが、消費者庁の調査*では、全世代的な支出の減少とともに、若年層(30歳未満)の支出の減少が示されています。その一方で、若年層で支出が相対的に伸びているのは、通信料でした。正確には、平均支出全体は減少している一方で通信料がほぼ横ばい、そのため相対的な支出が増えているという結果です。この流れも全年齢的なものとなっていくと予想されています。
 
 この結果が伝えているところは、「〇〇離れ」は、実は若者だけのものではなくなっているということと、あらゆる行動を司るメインデバイスへ経済的・時間的な資源が集中している、ということです。
*出典:消費者庁「平成29年版 消費者白書 第1部第3章 【特集】若者の消費」P121-P123
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/pdf/2017_whitepaper_0004.pdf
 
 
 
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変化する価値観

 若者に限らず、全年齢な変化のポイントには、価値観の明確な変化があります。特に日本社会における慣習的な考え方も変わってきました。NHKが実施した日本人の意識調査*1によれば、直近の20年の間で、結婚観と家庭とのバランスについての考え方が変わってきています。
 
 結婚については、「必ずしも必要ない」、「結婚しても必ずしも子どもを持たなくてよい」という考え方が、1993年から比べて大きく伸びています。また、仕事に対する考え方も同様に変化しており、余暇と仕事のどちらを優先するかについて、1970年代では仕事優先の考え方が多かったのが、仕事と余暇の両立の考え方が現在は最も多い考え方となっています。もっとも、国際的にみるとこうした価値観の変化もまだまだなのかもしれません。OECDのBetter Life Index*2によれば、ワークライフバランスのスコアは40か国中35位で、横並びで比較できるデータではないものの、長時間労働の改善や休暇の取得という点では国際的には評価が低いのが実情です。
 
 とはいえ、このように社会環境が変化する中で、消費者の考え方や価値意識の変化はライフスタイルそのものに大きく影響を与えています。生活のすべてを自分仕様にフルカスタマイズする人もいれば、仕事とプライベートをしっかり切り分けて自分の好きなことには時間とお金をかけるけれど、それ以外はほとんど頓着しない、というように、生活に合わせて必要な部分だけをカスタマイズする人もいます。自分にとってそれほど重要でないものは必要最低限の出費で効率よく済ませるけれど、自分がしっかりと使いたいものには必要なコストを払う、といったライフスタイル内での取捨選択のほうが、最近はより自然な選択になっているのかもしれません。
 
*1出典:日本放送協会 「第10回 日本人の意識調査」
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20190107_1.pdf
*2出典:OECD 「OECD Better Life Index Work Life Balance」
http://www.oecdbetterlifeindex.org/topics/work-life-balance/
 
 
 
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消費の部分カスタマイズによる二極化と最適化

 ライフスタイル全体の編集ではなく、必要な部分のカスタマイズという生活行動は、大きく見れば支出額の低減もありますが、安くても済むもの、あるいは安く購入できる方法などで消費の二極化が起きていることもあると思います。低価格で良いものと高価格帯のものという二極化の間で差別化できない商品やサービスはどんどん淘汰されています。特に近年では、ファッションブランドの撤退をはじめとした淘汰が止まりません。百貨店ブランドからファストファッションブランドまで、いずれも二極化の中で差別化できなかったブランド群がこうした憂き目に逢っています。
 
 ただ、この過程で、消費者は必要なものを必要なだけ選択するという最適化も同時に行っているとみています。たとえば、自動車などは、都市部の多くの人はそれほど持つことに必要性を感じませんが、子供や家族で移動したりする人は、都市部でも当然ながら利用することのメリット・デメリットを想像しながら、自動車の検討をしています。自動車そのものが好き・嫌いという考え方ではなく、自分の人生、ライフスタイルにとって、どのようなメリットがあると考えるか。その考え方とそこを起点とした消費者の人生を想像することが、自動車をはじめとしたプロダクトと付き合ってもらうためのヒントになるかもしれません。カーシェアリングなど、時間もお金も、必要最低限で合理的に対処することが、ある意味で当たり前に判断できる人たちが若者を中心に増えていることは確実です。シェアリングエコノミーは拡大し、一般的になりつつありますが、シェアと所有は、どの程度自由が利くか(欲求を満たせるか)の差で、まだしばらくサービスごとに揺り戻しが来るのではないかと思います。
 
 若者に限らず、幅広い世代の消費者が購買行動自体を変えています。最適化に向けて多くの消費者が何を買わなくなり、何を求めているのかを改めて問いながら、市場の行く末を見つめていく必要があります。そのためには、消費者を理解し続ける仕組みが必要です。
 
 その消費者を理解する仕組み自体も、変わっていく必要があります。消費者理解の方法として私たちがフォーカスしているペルソナ分析も、これまでのやり方とは異なる視点の情報の取り方を模索しながら、新たな消費者像を作っています。

 

第5回につづく!➡【消費者を理解するとは】第5回:真のコストパフォーマンスに目覚める消費者

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