Brand + UXデザインについて考える。(前編)

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長年にわたり、UXの研究・教育をされている安藤昌也教授。今年から弊社のBrandux Design部門へ顧問としてお迎えし、UXデザインのセミナーやワークショップを開催しました。そんな通称UX王子こと安藤教授とBrandux Designリーダーの大久保がUXデザインの観点から、これからのブランディングについて対談しました。

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安藤 昌也

千葉工業大学 先進工学部 知能メディア工学科 教授

総合研究大学院大学文化科学研究科メディア社会文化専攻修了。博士(学術)。ユーザエクスペリエンス、人間中心設計、エスノグラフィックデザインアプローチなどの研究、教育に従事。人間中心設計およびアクセシビリティの国際規格に関するISO/TC159(人間工学) 国内対策員会委員。人間中心設計に関するJIS規格の原案作成委員長を務める。また、NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-net)理事等を歴任。同機構認定 人間中心設計専門家。
2016年から、弊社の部署Brandux Designの顧問を務めていただいております。

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大久保 惠司

株式会社コプロシステム 取締役

大学卒業後、広告代理店にてプランナーとして大手電機メーカー等の広告・販促プロジェクトを手がける。’91に独立。主にハイテク系企業の広告・ PR企画業務に従事する。’97ウォータースタジオに取締役チーフプロデューサーとして参画、あらゆる業界のブランディング・商品開発プロジェクトを手がける。’08コプロシステムにおいて、主に商品開発系のマーケティングを支援する「商品計画研究所」を立ち上げ、携帯電話キャリア、電機メーカー、食品メーカー等のブランディング・商品開発に関するプロジェクトを多数手がける。昨年10月、価値あるブランド体験創出を掲げ商品計画研究所を再編成し、Brandux Designを創設。

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UXデザインが確立すれば、どんな企業でも問題解決の方法は同じ?

大久保:今日はよろしくお願いします。

安藤教授:こちらこそよろしくお願いします。改めてUXのお話ができるので楽しみです。

大久保:まず、私がBrandux Designという部署をなぜつくったのか、というところから改めて説明しますね。

何かしら問題のある製品、あるいはサービスがあると仮定して、ユーザー調査やインタビューといった、どんな企業でも応用できるユーザーエクスペリエンス(以下、UX)デザイン(注釈 1)のやり方によって解決した場合、例えばソニーでもAppleでも同じ解決方法になるのかな、と考えたんです。

というのも、これまで様々なUXに関する書籍や資料を目にしてきましたが、問題解決の説明にあまりブランドのことを考えないケースが多いな、と感じていて。

(注釈 1)

UXデザインとは…

ユーザーがうれしいと感じる体験となるように、製品やサービスを企画の段階らから理想のユーザー体験(UX:user experience)を目標にしてデザインしていく取り組みとその方法論(安藤昌也著『UXデザインの教科書』より抜粋)

安藤教授:なるほど。具体的な企業の想定そのものがないことが多いですよね。

大久保:問題解決ができたとしても、その方法がソニーでもAppleでも同じだとしたら、どうなんだろう? それがずっと疑問だったんです。 考えに考えて、やはりUXデザインはブランドによって定義される必要があるんじゃないかと思うんです。

安藤教授:そうですよね。僕もいろんなところでUXの話をしますが、その時にすごく大事にしているのは、その会社がそのサービスや製品をつくる理由です。既存のビジネスをやっている会社こそ、そのビジネスをやる意味や理由が必ずあるべきだろうと。

大久保:ブランドは消費者の経験価値を生み出し、UXデザインはそのブランドごとの定義を持たせる。それでBrandとUXデザインをくっつけてBrandux Designという名前にしたんです。

安藤教授:なるほど。私も過去に東芝デザインセンターのUXデザインコンセプトの立案を手がけたのですが、そのコンセプトを考えるために最初に行ったのは、東芝の文化、東芝らしさというものがどこにあるのか。それを明確にすることでした。

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大久保:どのように明確にしたんですか?

安藤教授:東芝らしさとは何だろう、と社員のみなさんと考えるワークショップを行いました。その中から東芝らしいUXとは何か、それをデザインコンセプトの柱に据えていきましょうというアプローチをとったんです。
日本にはエレクトロニクスの会社が複数あり、よく似た業種の中で、歴史ある東芝が取り組む理由こそUXデザインの軸になるべきだろうと考えたんです。

大久保:東芝ブランドをつくる人たちだから、ブレないですよね。

安藤教授:はい。最初に大久保さんがおっしゃっていたソニーとAppleの例ではないですが、そのブランドごとの製品体験やサービス体験というものがあるべきで、それをお客さんは望んでいるはずなんです。お客さんは、Appleに対しては、“Appleらしい問題解決”を望んでいるんだと思います。

大久保:なるほどね。AppleならAppleらしい問題解決によって製品が生み出されて、僕はそれが嬉しい。

安藤教授:UXデザインというのは、そういうものだと思います。今年出版した『UXデザインの教科書』の中でUXデザインを「デザインの実践」と位置づけているのですが、実践というのは単に問題解決するのではなく、ユーザーに良いカタチで届くことだと考えています。良いカタチの中には、“その企業らしさ”という企業ブランドへの理解が必ず含まれています。

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人間中心? ブランド中心?

大久保:ここで一つ疑問なのが、一般的にUXデザインは人間中心設計(注釈 2)という視点でできていますよね。そこには企業それぞれの特徴や個性を考慮しているんですか?

(注釈 2)

人間中心設計とは…

製品やサービスを使う人、つまりユーザーを常に中心において、あるいは優先的に考えて企画・設計・開発・デザインを行うこと。
(安藤昌也著『UXデザインの教科書』より抜粋)

安藤教授:人間中心設計は、デザインを実践する際に活用する理論や哲学ととらえています。デザインの実践においては理論とは別に、開発の実態に合わせた判断や意思決定がなされるはずです。ですので、製品やサービスがつくられるとき、必ずどこかのタイミングで、その企業のブランドに即したものであるか、あるいは新たなブランドとして価値ある提供になっているか、といった判断はあるはずですよね、ただそうした判断自体の必要性は人間中心設計プロセスには明示されてないんですけど。

別の考え方をすれば、製品やサービスの企画や設計、デザインをしている人たちには、その会社のDNAというか、その会社らしさが自然に判断に影響しているんじゃないでしょうか。そういった企業らしさが、逆効果になってしまうこともあるかもしれないですが、良い意味で反映させることもできると思います。

大久保:その会社らしさが何かしら乗っかるんですね。

安藤教授:はい。ただUXデザインはユーザーの本質的な価値・ニーズに注目することが重要なのですが、そこだけを聞くと、ユーザーニーズからアイデア発想して新しいものができれば、どんな会社・ブランドでもいいよね、と考えてしまうことがあるのも事実だと思います。

大久保:そうですよね。今は製品やサービスだけでなく、それを使った消費者がどういった体験を生むのかが求められていますからね。もともとは15、6年くらい前に似たような商品がたくさん並ぶ中、消費者は感情に結びついた経験を求めている、経験価値マーケティング(注釈 3)という考え方が起点ですよね。これからはエモーションにフォーカスを当てていくべきだ、という流れができてきて。

(注釈 3)

経験価値マーケティングとは…

従来のマーケティングの基本的な考え方である4P(Product、Price、Place、Promotionといった考え方と異なり、SENSE(感覚)やFEEL(喜怒哀楽)、THINK(考える)、ACT(行動する)そしてRELATE(他社との交流)という5つの経験領域から、マーケティングを考えようという考え方。
価格や性能、そのアピール方法といった合理的な視点ではなく、消費者の感情に焦点を置いている。

安藤教授:そうですね。UXデザインにも、経験価値マーケティングの考え方は大きな影響を与えたと思います。経験価値マーケティングは人の感性を重視しているのに対し、UXデザインはそれらを踏まえて実際のつくり込みに重きを置いているような位置づけですね。

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やきもきするUX。

大久保:これからのUXを背負っていく学生には、どんなことを教えているんですか?

安藤教授:千葉工大では、UXデザインの考え方から始まって、演習を通してUXデザインを実践できるように、徐々に課題の難易度を上げながら教育するカリキュラムを作っています。4年生で研究室に配属されるんですが、安藤研究室では、UXデザインの考え方に基づいた卒業研究を進めます。例えば今年の例で言うと、ライブイベントの体験をよりよくするためのUXデザインを考えている学生がいるんです。具体的には告知といった事前のサービスからチケットの販売、購入。それからライブの日までの期間をつなぐような体験ですね。

大久保:それは面白そうな課題ですね。パッと思いつくのは、SNSでのコミュニケーションですよね。

安藤教授: 確かにSNSも有効かもしれませんね。でも、UXデザインを実際に作り込もうとすると、ただSNSを準備すれば良い、ということでは十分じゃないんです。ここでも、ブランドイメージというか、その対象となるバンドのイメージが、デザインのヒントになるんです。

例えばですが、ライブに出演するバンドのイメージが、ちょっとツンデレなスタイルだとします。そんなメンバーのライブのチケットを買う場合でも、普通の発想ならば、一般のチケット販売サービスのような事務的なインタラクションが当たり前と思ってしまいます。決済が終わった画面で「ありがとうございました」と表示されるような。

ですが、そのバンドらしさを考えたら、チケットを買ったのに「ありがとうございました」がでてこないで、しばらく時間をおいて「なんだ買ったんだ」と、遅れて返事が来たら、それはそれでツンデレバンドのファンとしては、ちょっと嬉しく感じるんじゃないでしょうか。

大久保:確かに。事務的な返信よりそのメンバーらしくていいですね。

安藤教授:ユーザーの体験をユニークなものにしようと思ったら、ユーザーが何か操作した後の返信、つまり、操作のフィードバックのタイミングをずらしたりすることで、ユーザーに感情を起こすきっかけを作ることができます。これは比較的伝統的なやり方です。今はメッセンジャーのように、リアルタイムでやり取りができますよね。恋人同士の会話もしたい時にいつでもできる。でも、電話の時代は、夜になると電話できないなぁとか、もっと昔は手紙だったわけで。そういうフィードバックにディレイがあればあるほど、人は感情を豊かにしていたわけですね。今なんかは、既読になったかどうかで、やきもきしている人もいるわけですけど(笑)

先ほどの話では、システム的に購入者に「ありがとうございました」とフィードバックが来ることに慣れているし、事務的にはお金を払ったことの返事は必要だけど、あえて冷たくした方がそのバンドのイメージ、言わばブランドイメージだとすると、そのアイデンティティらしいフィードバックがあり得るわけですよね。

大久保:やきもきするUXですね。

安藤教授:それがその人らしさであり、イメージ、ブランド、コーポレートアイデンティティは、感性的な表現の拠り所だと思うんですよね。

大久保:それこそコミュニケーションも含めてのUXデザインですね。

対談の後編はこちら >

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