オープン・イノベーションと知のダイナミクス

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最近、あらためて組織などの枠を超えた形で行なうオープン・イノベーションの必要性とその実践方法について考える機会が増えてきています。

11月20日(火)にロフトワークさんの主催で行なわれるイベント「オムロンヘルスケア社はなぜイノベーションを起こせたのか?」のイントロダクションでの短い講演でも、そんなお話をしようかなと思っているのですが、とにかく大きく社会が変化している今の時代にあって、機能不全を起こしている従来型の社会OSに変わる、新しいOSをオープン・イノベーションの形でデザインし実用可能なものにしていくことが急務であるように感じます。

ただ、その場合、従来型OSに最適化された組織の枠に閉じこもった形では新たなOS開発の実行はむずかしく、組織の枠組みを超えてコ・デザインの形で進めるオープン・イノベーションによって、新たなOSの模索=プロトタイピングを行っていく必要があると思うのです。

オープン・イノベーションを進める上での3つの基本姿勢

特に組織の枠を超えてオープン・イノベーションを進めていく上では、従来のように情報や知を組織のなかに閉じた形で所有しようとする発想をあらためることが大切なように思います。そんなことを整理するためにさっき、こんなノートを描いてみました。

(▲クリックで拡大)

考えたのは、オープン・イノベーションを進めるためには、

  • スピード感のある「対話や観察を通じた仮説生成」〜「プロトタイピングによる検証」のサイクルをグルグル回しながら新しいOSの実現につながるアイデアをブラッシュアップしていくこと
  • 多様なステークホルダー間で対話や共創が行なわれる場をつくり、問題の正しい定義や既存のリソースの共有による新たなアイデアの生成を実行できるようにすること
  • 「独占的なメーカー」から「誰もがメーカーズ」になる世界への移行に伴い、企業などの組織が完成品としての商品を解決策として売るための社会OSから、各個人や、社会コミュニティが、それぞれ独自の解決策を作れるプラットフォームを提供する社会OSへの移行を目指していくこと

などの3つの基本姿勢が必要になりそうだということと、もう1つ、こうしたオープン・イノベーションの必要性が増した背景として、知そのものがスタティックなものからダイナミックなものへ変化していることも大きく影響しているということでした。

知の価値=役割の変化とオープン・イノベーション

ノートの下の方にざっくりとした流れで描いていますが、知識というものはいま、従来のように本に記載された形で個人所有や図書館のような場所で保有される有形の財の形から、インターネットの誕生以降、FacebookやTwitterのなかでおしゃべりのようにダイナミックに流れていく情報に変化する形を経て、いまフューチャーセンターのようなリアルな場における対話のなかで1つの形に固定されることなく、生成され変形する非常にダイナミックな存在へと大きくその意味合いを変化させています。

このダイナミックな知は、従来のスタティックの知のように個人や閉じた組織が私有するのには向いていません。というより、むしろ、このダイナミックな知は個人間や組織間の「間 ma」においてこそ生成されるものといっていいでしょう。消費社会においていったんは所有可能な形に商品化された知は、参加型経済モデルの社会において、ふたたび開かれた場において生成されるイベント的なものに変化していると言えるのかもしれません。

その意味でも、この新しい知は、従来のように書籍や答案用紙に記載できるような決まった答えではありません。他人からもらえる答えを欲しがってばかりの人には生きにくい時代には当然かもしれません。新しい知は、それをもらって安心できる答えではなく、人や組織を動かすエネルギーのようなものなのだと思います。ですから、知識を手に入れ、所有することが大事なのではなく、知識をどんどん生成することで活動が可能になることが知識そのものの価値になるのです。

オープン・イノベーションがまさに知を組織の枠を超えてオープンにしていくことが前提となる背景には、こうした知の価値=役割の大きな変化があるということを理解しておくことが必要です。

地域という未来の社会OSと開かれた対話の場

その意味では「独占的なメーカー」から「誰もがメーカーズ」になる世界でオープン・イノベーションを実現していくためのは、答えとしての、商品としての解決策を外から提供してもらうのではなく、解決策を必要とする人たち自身がその解決策を作り出せるような場=プラットフォームがあることが何より大事なことなのだと思います。

その意味では、先日、熊本県の黒川温泉で行なわれた黒川フューチャーセッションにゲストとして参加させていただきましたが、未来を考える場合、オープン・イノベーションを起こしていくプラットフォームとして地域を1つの核とし、そこを基点に経済文化のOSをいかに形成していくかが大きな鍵になるなという思いをあらためて強くしました。

▲黒川フューチャーセッションの様子

黒川フューチャーセッションは、「黒川一旅館」のコンセプトを大事にしている黒川温泉の青年部のみなさんが中心となって、これからも1つになって黒川の未来を創っていこうという願いを込めた「いち黒川わっしょい!」というプロジェクト名でスタートしています。フューチャーセッションという形では、今回、僕が参加させていただいた11月5日のセッションも含めて、プレセッション2回、本セッション2回を実施しているそうです。回を重ねるごとに、青年部の方だけでなく、その親御さんの世代の方、行政の方や近隣農家の方も参加して、様々な視点から黒川の未来を考え、具体的なアイデアを出し合っています。

先日も、ブレインストーミングによるアイデア出しから、最後はアイデアをシナリオの形で描きなおしたものをスキットの形式で発表する形でセッションが行なわれたのですが、自分たちの未来をつくるための参加者の熱気はこれまで東京で行なわれたフューチャーセッションでは感じたことがないものでした。とても充実した時間を過ごさせていただき、関係者のみなさまにはこの場を借りて感謝を述べておこうと思います。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

地域というオープン・イノベーションの場に対する外部からの参加者の役割

さて、そんな黒川フューチャーセッションは、来年3月まで月1回のペースで実施していくなかで未来の黒川をつくるために必要な具体的なサービスを試験的に提供することをゴールとして活動されています。黒川温泉の24軒の露天風呂の湯めぐりができる「入湯手形」というサービスによって、まさに「黒川一旅館」のコンセプトを具現化し、黒川温泉への集客力を高めたときのようなサービスが生まれるかが、とても楽しみですし、これからも何か力になれることがあればお手伝いしたいと思えたセッションでした。

僕のように外から、地域のイノベーションを起こすためのプラットフォームに参加する人の役目は、そこに住む人たちの持っているリソースをあらためて棚卸しするなかで、それらの新たな組み合わせによってこれまでにないものを生み出すお手伝いをしたりすることが第1なのだろうと感じました。

今回の黒川の場合はすでに南小国町や熊本県という自治体の方が参加していましたが、こうした地域をキーに新しい社会OSをデザインしていく際には、企業の参加が必要なケースもあると思います。そのときに企業が従来のように商品の提供という形のみでその活動に参加するのではなく、別の形で地域の人たち自身がソリューションを生み出せるプラットフォームを提供する形を今後模索していく必要があると考えています。

各地域がそれぞれオープンイノベーションを実現していくことを支援するプラットフォームとなるような仕組みづくり。そんな仕組みのデザインを行っていくのも僕らのような立場の人間のミッションなのだろうなと考えています。

変化の時代、そんなオープンな姿勢で、いろんな方々と協力しあって、より良い社会をつくっていければと思います。


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