創造のダイナミクスの3段階 〜集める、集合同士をつなぐ、ズレを取り込む〜

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多様なものが集まり合って、その集合のなかでそれまで出会うことのなかった異質なもの同士が関わりあうところから新しい何かが立ち上がってくる。異質な文脈同士が1つの集合のなかで重なり合い、別の文脈を生じさせるプロセス。そして、これまでなかった新しい文脈ですでにある素材を見つめ直せば、これまで思いもつかなかった組み合わせが浮かび上がってくる...。

新しい物事を組織的に生み出す環境を準備しようとすれば、そうした多様性をもった異質な者同士が集い、コ・クリエーションするような場をいかに用意するかといったことがまず課題となります。

それは前回の記事「ブレインストーミングを成功させるためには何が必要?」で取り上げた、ほかの人のアイデアを発展させたりしながらとにかくアイデアの量を増やすブレインストーミングでも同じで、数多くの異なるアイデア同士が互いに絡み合うような形がつくれた場合ほど、斬新なアイデアが出てくる可能性が高まります。

そのためには多くのブレインストーミングで使われるポストイットのように、異質なもの同士が集まり、肩を並べることを可能にする共通フォーマットや、「ほかの人のアイデアを発展させる」というルールのように元から異なる要素同士の連携をうながすような約束事も必要となるでしょう。反対に、そうしたルールやフォーマットのような仕組みがないブレストでは、たんに人が集まり、アイデアがいくつか出されるだけで、創造的な結果には結びつかないことが多くなります。

異質な要素がたがいに集まり、その場で関わりあえる場づくり、仕組みづくり。組織的な創造性を高めることを考えるうえでは、このあたりが1つのポイントになりそうです。

After Internet の時代 〜「文化の力・東京会議」より

こうしたことを考える上で、先日、参加させてもらった、アーティストの藤浩志さん、ふんばろう東日本支援プロジェクトの西條剛央さん、著作権政策や知識経済の革新などを手がけるアムステルダムのシンクタンク・ノレッジランドの副議長を努めるポール・ケラーさん、ロフトワークの林千晶さんが登壇したパネルディスカッションの内容はとても参考になるものでした。

▲ 文化の力・東京会議 第2分科会でのパネルディスカッションの模様

このパネルディスカッションは、今月いっぱい開催中の「東京クリエイティブ・ウィークス」の一環として開催された「文化の力・東京会議」という国際会議の第2分科会「文化芸術の挑戦に持続可能性を付与するフレームワーク」として行なわれたものです。

冒頭でモデレータの林さんから、西洋の歴史が従来、BC(Before Christ)/AD(Anno Domini 主の年に)で記述されてきたのに対し、これからの歴史は"After Internet"と記述することもありえるのではないかと思えるような大きな変換点を迎えているという話がありました。

ネットワークでつながった環境において個々のもつ資源をオープンにすることで可能になるコ・クリエーションの作業を通じて様々な新しい価値が生まれてくる時代"After Internet"。今回パネラーとして登壇した3人はまさにそうした時代にふさわしい活動をしている方々であり、TwitterやAmazonのウィッシュリストなど、既存のインターネットサービスをうまく活用して復興支援活動を行っている西條さんはもちろん、アーティストの藤さんも地域における資源や技術、人間同士の関係などを活用してアートプロジェクトを立ち上げる興味深い活動をしている方ですし、ケラーさんも今回僕ははじめて知りましたが、ヨーロッパの文化遺産をオンラインに統合してアクセスできるようにした「Europeana」というサービスの構築に関わっている方です。

今回のパネルディスカッションではまず3人それぞれの活動をプレゼンテーションした上で、文化的なチャレンジを持続可能な社会活動に発展させていくためにはどんな仕組みやルールが必要で、逆にそれらの仕組みやルールがどんなとき、どんな風に障害となりうるかといったことが議論されました。

創造のダイナミクスの3段階

そんなコ・クリエーションが創造的な活動の代表的な手法となる"After Internet"において、社会的な活動を実現していく上での仕組みやルールに関する話を聞きながら、僕は、創造のダイナミクスには以下のような3つの段階があるように思えました。

  1. 集合をつくる仕組みの構築
  2. 複数の集合を連携させる仕組みの構築
  3. 既存の仕組みからズレた現象を取り込めるよう仕組み自体を新しくする

この3つの段階は同時に起こるというより、時差をもって順番に生じます。そして、それぞれの段階で新たなものを生み出し、そこで生まれた新たなものが社会に定着して新たな課題を生じさせた際、次の段階への活動がはじまります。

といった、抽象的なまとめだけだとわかりにくいので、藤さんの活動の例で説明します。

そもそも今回、このパネルディスカッションに参加したのは、1ヶ月ほど前に藤さんの美術展「セントラルかえるステーション ~なぜこんなにおもちゃが集まるのか?~」をみて、藤さんの活動に興味をもち、話を聞いてみたいなと思ったからです。

 

▲ セントラルかえるステーションでの展示風景

藤さんは、9月の展示でも約5万件のおもちゃを素材としたインスタレーションを見せてくれたように、子どもたちがおもちゃを交換するシステム「かえっこをはじめとして、地域社会のなかでモノや情報が循環していく仕組みをテーマとした作品で知られるアーティストです。

かえっこはいらなくなったおもちゃを使って楽しい活動を作り出すシステムです。

かえっこでは「カエルポイント」という世界共通の(?)「子ども通貨」(遊びの通貨)を使います。

かえっこは「おもちゃのリサイクル交換会」...のように見えますが、実はちょっとちがいます。

使わなくなったおもちゃをカエルポイントを使って交換する仕組みを使って子どもたちが自発的に様々な活動や体験をする、「遊びの場」です。

子ども同士、いらなくなったおもちゃを「カエルポイント」を使って交換し合う場を楽しむことを、システムとして可能にしたかえっこ。このシステムによって、おもちゃの交換によってこどもが遊ぶ「かえっこ」の場は2000年に発案されて以来、国内外1,000 カ所・5,000 回以上も開催されたといいます。現在、全国に40のかえっこコミュニティがあり、先にも書いたとおり、藤さんの元には、5万点を超えるおもちゃが集まっているといいます。まさに「1.集合をつくる仕組みの構築」の結果と言えるでしょう。

ところが、藤さんは「おもちゃが山ほど集まって、次の課題が出てきた」と言っていました。

その課題というのが、地域における活動を作り出すための仕組みとしてアートプロジェクトを活かすことであり、その具体的な取組みとして「部室ビルダーかえるぐみ」という試みを進めているそうです。そして、この「部室」。全国で部室のネットワークをつくり、情報交換しながら地域社会を楽しく豊かにしていくアイデアを育んでいくことが目指されるという意味では「2.複数の集合を連携させる仕組みの構築」の段階に入っているように思うのです。

「3.既存の仕組みからズレた現象を取り込めるよう仕組み自体を新しくする」に関しては、もうすこし1と2の段階を説明したあとにあらためて話題にしようと思いますが、どうでしょう? すこしは3つの段階ということで何を言おうとしているかイメージできてきたでしょうか?

1.集合をつくる仕組みの構築

最初にも書いたとおり、ブレインストーミングは、複数の参加者が自律性を持ちつつ協力しあいながらたくさんのアイデアを生むためには、ポストイットにおさまるように書くというフォーマットや「他人のアイデアを膨らませる」「質より量にこだわる」といったようなルールがあるほうがうまくいきます。

それと同じように、異質な要素がたがいに集まるようにし、かつ、その場で複数の要素同士が関わりあえるような場づくりをするためには、共通のフォーマットやルールを備えた仕組みが必要になります。はじめて会う子ども同士が異なるおもちゃを交換して遊べるようにする「かえっこ」のシステムもそうですし、グループワークでのアイデア出しがルールやフォーマットをもったゲームストーミングの手法を使うと活性やされやすいのも同様だと思います。

もちろん、仕組みが先にあって、そこに集合ができる場合もあれば、集合が形成されるなかでルールが出来上がってきて仕組みとなっていくような場合もあるでしょう。ですので、仕組みが必要というのは必ずしも、それが先になければいけないという意味ではありません。さらに言えば、既存の仕組みが邪魔をして、新たな集合が形成できなかったり、集まったもの同士がうまく交流できなくなったりもします。

過去の藤さんが行なったプロジェクトでは、この集合をつくる仕組みをうまく構築した例が非常に多く見られます。いろんな人を集合させ、その人たちに共通モジュールを与えることでそこから勝手に様々なアイデアが生み出されるシステムが考案され、アートプロジェクトとして発表されてきました。

例えば、ペットボトルを組み合わせて工作をする「Plastic Bottle Works」もその1つです。

このプロジェクトでは以下のように、動画でペットボトルカヌーの作り方を提示することで、ペットボトルによる工作の1例を示すことで、それ以外の工作物が生まれてくるきっかけも提示しています。

共通モジュール、ルール、ケーススタディだけを提示して、あとはオープンに集めた人たち同士の自由な創造をうながす仕組み。まさにAfter Internet の時代の代表的なクリエイティブの方法であるオープンソースやオープンイノベーションの方法との共通点があります。

こうしたバラバラの要素が集い、独立性を維持しながら、共創を行なう場づくり。それが1つめの段階としての「集合をつくる仕組みの構築」であると思います。

2.複数の集合を連携させる仕組みの構築

集合の形成がうまくいけば、次の段階としては、それぞれ個別に生まれた複数の集合同士をいかに連携させるという課題も生じます。先の「部室ビルダーかえるぐみ」も、各地域の部室=つくるコミュニティという複数の集合をどのようにつなげていくか?ということが課題になっているのかなと思います。

この「複数の集合を連携させる仕組みの構築」という例に該当するのが、もう1人のパネラー、ポール・ケラーさんが著作権政策という視点から関わっている、ヨーロッパの文化遺産をオンラインに統合している団体「Europeana」の例です。

europeana-logo

このヨーロピアーナというプロジェクトでは、ヨーロッパ各国の2000を超える図書館、博物館、文書館の協力をえて、600万件を超える膨大な量の書籍や音声データ、映像、絵画、手稿史料などをデジタル・データとしてポータルサイト上で公開しています。

ちょっと考えても想像がつきますが、実際、ケラーさんも話していたように、このプロジェクトを実現する上では、各国の各施設がそれぞれ所有するコレクションをいかにヨーロピアーナのサイトに提供してもらえるようにするかが問題となったようです。

各施設がそれぞれの考えで構築したコレクション(集合)を、その枠組みを超えてほかのコレクションとも連携をとりながらアクセス&利用できるようにするというのは、それまでの各施設がコンテンツを収集する活動とは異なる理由が必要になるはずです。そして、場合によっては新たに必要とされる理由が、従来の理由とは相反する場合もある。第2の段階ともいえる「複数の集合を連携させる仕組みの構築」では、そうした個別の集合を成立させる仕組みそのものが、集合同士を連携させる妨げになるという課題があり、その課題を乗り越える仕組みの構築が求められるのです。

ヨーロピアーナの場合、連携を可能にした1つの要因として機能したのが、収集した情報を単にヨーロピアーナのサイトのみで閲覧できるようにするのではなく、APIの公開によってPinterestやWikipediaやAmazonなどの外部のサイトでも閲覧が可能なようにしたことだったようです。こうした利用する人が多いサイトへの掲載を可能にすることによって「ヨーロピアーナに協力した場合、どのくらいの人に見てもらえるようになるのか?」という各機関の懸念を払拭できるようになったのも、連携へのハードルを下げた1つの要因だったそうです。

ヨーロピアーナのPinterest

このヨーロピアーナの例のように、組織や地域などの枠組みを超えた連携をはかる仕組みをいかに生み出すかという課題は、よりスケーラビリティを問われる機会も多くなると予測されるコ・クリエーションの社会環境においては重要なテーマになってくると思います。

3.既存の仕組みからズレた現象を取り込めるよう仕組み自体を新しくする

最後に3つめの段階。この段階は、1つめや2つめの段階で生み出した仕組み自体がそれが機能する環境とのズレが生じすることで、そこからはみ出る要素が生まれてくる段階です。

まさに1つめや2つめの段階で生み出した仕組み自体が次の活動を進める上での障害になる地点がここにあります。

この段階では現在機能している仕組みが何の障害となっているかを感じとることが重要です。仕組みを固定してしまったがゆえに、そこからはみ出してしまったものは何かを感じとる嗅覚をもつことです。

その点でも藤さんと林さんのあいだで話がされた「ズレる」という現象って実はすごく大事なことだと思います。何らかの活動や会話を重ねていくと、その間に時間が経つとズレが生じます。時にはそこでパラダイムが変化したりして、何が重要かが変わって、既存のフレームワークが役に立たないどころか、邪魔になったりする。反対にそれまで無用だったものに価値が生まれてきたりもします。

実のところ、ブレインストーミングでのアイデア出しでも、新たな社会課題を見つけてイノベーションを創出する場合でも、狙ってるのはこのズレをどうやって見出すかなんです。ズレ自体が既存の文脈を別のものに置き換えるチャンスになるんです。つまり、このズレの発見が1つめや2つめの段階に向かうきっかけになるんですね。その意味ではこの創造の3つのダイナミクスにしては終点はないし、終点がないからこそ常に新しいものを生み出していく余地が残されているんだと思います。

だからこそ、ズレに着目する必要があるし、意図的にズレが生じるように動かしていくということも必要だと思います。藤さんの言っていた「モヤモヤしたものをいじっていくとズレる」という話もまさに同じようなことなんだろうなと感じました。

今回、このディスカッションに参加させていただいて、いろんなヒントをいただけた気がしています。まだ、うまく咀嚼しきれていない部分もありますが、コ・クリエーションのダイナミクスを考える上ではこれからに活かせそうと思えるきっかけをもらえました。

ということで、いつも以上に長くなってしまったので、このへんで。


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