ブレインストーミングを成功させるためには何が必要?

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何か新しいアイデアがほしいときに何人かで集まってブレインストーミングをやること自体は、もはやビジネスシーンで普通に見かけられるようになった光景ではないかと思います。数人が集まって、それぞれが思いついたアイデアをポストイットに書いて貼っていったり、ホワイトボードに書き出してみたり。アイデアをいろいろ考えること自体は楽しい作業なので、その場は他の業務を行なっているときよりも盛り上がることが多いと思います。

けれど、新しいアイデアが欲しくて行なったブレインストーミングが当初の目的どおりの成果を得られて成功に終わるかというと、その成功率は決して高くはないでしょう。なかなか斬新なアイデアが出てこなくて、ありきたりの答えばかりが集まってしまうというケースも多いと思います。

ブレストを成功させるための要素にはどんなものがあるのでしょうか? そもそも、おもしろいアイデアってどうしたら出せるんでしょうか?

今回は、そんなことをすこし考えてみようと思います。

開催場所や用意するもの、参加者、テーマ選定などの要因がブレインストーミングの成功を左右する

ブレインストーミングを成功させる要素としては、当然、開催場所やそこに用意するもの、参加者、テーマの選定なども大事な要素だと思います。

僕自身の経験を振り返ってみても、ブレインストーミングを開催する空間が参加者が動き回ったり、ほかの人がアイデアを書き出したポストイットの内容が読みづらい空間レイアウトだったりすると、あまりいい結果は得られません。アイデアを書き出したポストイットを貼り出す場所が狭すぎると、その空間が埋まってしまった途端、アイデアが出にくくなったりもします。こういう創造的なワークでも、物理的な環境の影響って大きいんですよね。

参加者に関してもあまり考えずに適当な人を集めてしまうと、同じようなアイデアばかりで発想が広がらなかったりすることもありますし、かといって、いろんな人を集めようとしてテーマに対して興味を持たない人まで呼んでしまうとやっぱりうまくいきません。誰に参加してもらうかって大事です。オープンに参加者をつのる場合でも、テーマや主旨をはっきりすることで、自分たちが来てほしいと考えるタイプの人に来てもらえるようにする必要があると思います。

そんな風に、開催場所や用意するもの、参加者、テーマ選定などはもちろんブレインストーミングの成功を左右する大きな要因なのですが、今回はそれらについてはこれ以上は触れません。

ここからはもっと焦点を絞る形で、「量を追求する」「大胆なアイデアを歓迎する」「視覚的に表現する」などの数あるブレインストーミングのルールのなかでも最も大事な「アイデアを批評、評価しない」ことについて考えていくことにします。

白紙から始めれば、アイデアには悪いものなどない

スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授は『20歳のときに知っておきたかったこと』の中で、ブレインストーミングを成功させるためには、アイデアには悪いものなどないということはっきり示すことが必要だと言っています。

アイデアに「悪い」ものなどない--そう考えられたらブレインストーミングは成功です。(中略)奇抜なアイデアを大歓迎すれば、人に話す前にアイデアを編集してしまうクセはなくなります。当初、提案されたときは非現実的で、とんでもないと思われたアイデアも、長い目で見ればいちばん面白かった、ということはよくあります。

この「アイデアには悪いものなどない」という意識は、新しい発想を生み出す上ではとても大事なものです。

ビズジェネで連載中の記事の最新版「インドのグラスルーツ・イノベーターに学ぶ「白紙から始める」イノベーション」の中でも紹介した、低価格の生理用ナプキンを生産する機械を発明したことで、インドの女性たちの生理用ナプキン利用率を向上し、農村部の女性の雇用の創出や子どもの教育機会の改善というソーシャルイノベーションを実現したアルナシャラム・ムルガナンサムも「新しいことを始めるのであれば、白紙から始めよう」と言っていましたが、新しい発想を生み出そうとすれば、自分自身がそれまでもっていた評価基準をいちど白紙にして、どんな奇抜なアイデアも非現実的なアイデアも受け入れられるようなニュートラルな目でまわりを見渡すことが必要だからです。

他の人が出したアイデアを非現実的だとか、奇抜すぎるとか評価してしまうのは、従来と変わらぬ自分の思考のフレームワークや価値観から抜け出せないからです。従来どおりの枠組みの中だけで考えるのならブレインストーミングなどやる価値はないし、それに固執していたら新しい発想は生まれません。

ブレインストーミングで求められるのはまさにその逆のことです。従来の自分の思考の枠組みから自分自身を自由にして、従来にはなかったオルタナティブな枠組みから見えてくる新しい発想をつかまえる場がブレインストーミングの場です。

アイデアに悪いものなどないという状態でどんなアイデアも受け入れられるよう自分を自由にしてあげること。つまり「白紙から始める」です。

ほかの人のアイデアを発展させる

ブレインストーミングではほかの人が出したアイデアを批判せずに、むしろ、ほかの人のアイデアを発展させなくてはなりません。

というのも、ほかの人のアイデアって、そもそも自分とは異なる他人の目から生まれたものです。この自分の「外」の視点が貴重です。そこには従来の自分の思考の枠組みから見ただけでは手に入らない、他者の異なる視点からみたものが含まれているからです。だから、他人のアイデアにのっかって、それを発展させるということは、自分が従来持っていたものを捨てて「白紙になる」ためには打ってつけなのです。

しかも、他人から出されたアイデアを見たとき、一瞬、奇抜すぎるとか、非現実的じゃないの?とか感じてしまったアイデアのほうが、そのアイデアを発展させる価値があるかもしれません。なぜなら、奇抜だとか非現実的と感じるくらい、そのアイデアは自分の思考のフレームワークの外側にあったということですから。そのアイデアを発展させようとすれば、従来の自身のフレームワーク自体をリフレーミングして、奇抜なアイデアの良いところを見つけ出し、それをさらに伸ばすにはどうしたらよいかを考えるのです。

僕らは何かと勘違いしてしまいがちですが、優れたアイデアは突如、一気に生まれるのではなく、下の図のように他人のアイデアを発展させ、積み上げていった結果、そこに発想の飛躍が生じて生まれるものだということです。

すこし話が逸れます。ブレインストーミンングに限らず、求めるものには一気に辿り着けず、段階を踏むことで到達できるということはいろんな場面であることですが、それがわからずいきなり答えを期待してしまう人は少なくありません。例えば、デザイン思考でこれまでにない新しいモノを考えようとする際に、プロトタイピングの手法を用いるのも段階を踏んで求めるものに到達する1例ですし、シリコンバレーがその土地の文化として「失敗はイノベーションのプロセス」と捉えていて失敗の段階を繰り返すことで大きな成功に到達すると考えるのも同じでしょう。

それとはまさに正反対なのが、若い人を中心にみられますが、いまの自分の状況だけから判断してすぐに「そんなことは自分にはできない」とあきらめてしまう人たちの思考スタイルでしょう。一回のアクションで目的のものを手にしようとするから届かないように思えるのであって、段階を踏んで1段1段登っていけば、目指すものもそれほど非現実的な高さにないということに気づかず、あきらめてしまったりします。

目指すものは一歩一歩段階を踏んで手に入れるものだと知っている方は逆に、ブレインストーミンングで画期的な発想が生まれるのにも同じように段階を踏む必要があることを想像してみるとよいのではないでしょうか。こういう見えないプロセスが大事ですので。そう。『星の王子さま』でもキツネが言ってますよね。

"Le plus important est invisible"(大切なものは目に見えないんだよ)って。

優れたアイデアへのジャンプ=創発を期待

さて、話を戻しましょう。先ほども引用したティナ・シーリグ教授は別の本『未来を発明するためにいまできること』でこんな風に書いています。

ひとつひとつのアイデアはタネであり、大木になる可能性を秘めています。タネを播かなければ木が育たないのとおなじで、アイデアを出し、時間をかけて育てなければ、実りある結果は生まれません。そして、アイデアは出せば出すほど、良い結果につながります。

ブレインストーミングで質より量を問われるのはまさにこの観点からです。けれど、量が増えても、参加者ひとりひとりが他人のアイデアを発展させることを通じて、自分の従来の思考の枠組みから自分を自由にさせるために、その量を使わなければ、良い結果=優れたアイデアにつながるジャンプは生まれません。

このジャンプというのは、いわゆる複雑系の科学でいうところの「創発」的な変化なのだと思います。ネットワークのなかで個々のバラバラな要素同士が自由にローカルなインタラクションを繰り返した結果、大局的な変化が創発する。これがさらに大規模に生じるのが「複雑系の関係性のなかで社会のイノベーションを考える」で話題にしたようなソーシャルイノベーションが成功へと転じる瞬間なのでしょう。

規模の大小はあれ、ブレインストーミングでそれまでまったく見えなかった画期的なアイデアに辿り着くのも、ソーシャルイノベーションで従来考えられなかった動きが社会に生じはじめるのも、そんな創発的な変化なのでしょう。

創発が生じるためには参加者個々が独立性をもちながらも他人のアイデアを発展させる繰り返しが必要

その意味では、ブレインストーミングの成功をコントロールすることはできないと言っていいのだと思います。ただ、コントロールはできないまでも、成功につながるアイデアを創発させるために必要なことが何かということまでわからないわけではありません。

創発を生じさせるために必要なものこそ、今回扱った「アイデアを既存のフレームワークにあてはめて評価せず白紙で受け入れる」ことと「他人のアイデアを発展させる」ことによる、参加者同士のインタラクションなのです。局所的な相互作用的ふるまいが臨界点を超えた時に、大局的なふるまいを変える創発は起きます。それを誘発する環境をつくるためにも、参加者個々が独立性をもちながらも他人のアイデアを発展させる繰り返しが必要なのです。

あとは、この優れたアイデアが創発する基本的なしくみを意識した上で、いかに参加者同士の相互のふるまいのなかで全員が常識の枠組みから離れられるよう、ファシリテーションできるかということでしょうか。このあたりのファシリテーターの役割についてはまた別の機会に書いてみようと思います。今回はこのあたりで。

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