未来をつくる方法の1つとしてのデザイン思考

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昨日(7月23日)、某会社で「デザイン思考」を中心的なテーマとした講演をする機会をいただきました。

このブログでもいつも述べているとおり、イノベーションの方法としてのデザイン思考という観点でお話をさせていただきましたが、今回は、なぜいま「デザイン思考」や「イノベーション」が求められているのか?という点を、世界的な「未来志向」の高まりという観点から考え、お話させていただきました。

講演資料「デザイン思考による人間中心のイノベーション」

その講演で用いたプレゼンテーション資料をすこしカスタマイズしてスライドシェアにアップしましたので、ここでも紹介しておきます。

講演の内容は、

  1. なぜ、いまデザイン思考なのか?
  2. イノベーションとユーザー体験
  3. デザイン思考のメソッド

といった3部構成で、「未来を作る方法」としての側面から、いまなぜデザイン思考が求められるのか?といった点、それから具体的に、その「未来を作る方法」であるデザイン思考をどのように用いればよいか?を考察する内容でお話させていただきました。

では、この場を使って、お話しした内容を簡単におさらいさせていただきます。

1. なぜ、いまデザイン思考なのか?

はじめの「なぜ、いまデザイン思考なのか?」では、いまデザイン思考が求められる理由についての私なりの理解として、生きる前提が大きく変化するなかで、新しい生き方や働き方を模索する未来志向の意識が高まっていることが、いまあらためてイノベーションの方法であるデザイン思考に注目が集まっている背景にあることを指摘しました。

そうした未来志向の意識が高まる中で、具体的な新しい生き方や働き方を模索しようとする際の1つの選択肢としてデザイン思考という方法が検討にあがるのだろうと。

その意味では、いま求められているのは「未来を作る方法」そのもののイノベーションでもあると思います。旧来型の「未来の作り方」が使い物にならなくなってきているという意識から、自分たちの未来をつくるために必要な新しい「未来の作り方」の模索も同時にはじまっているのだという印象をもっています。右肩上がりに経済も人口も増えていく社会における「未来の作り方」から、経済も人口もともにダウントレンドとなった社会における新しい「未来の作り方」がつよく求められているのだと思います。デザイン思考だけでなく、フューチャーセンターなどへの関心もそうした意識の変化のなかに位置づけられるでしょう。

そんな前提に立った上で、「未来を志向する」際に考慮すべきポイントとして、次の3つの点をお話させていただきました(スライド19-33)。

  1. 人間中心のイノベーション
  2. 社会の共有価値を創出する
  3. 新しいつながりが未来をつくる

「1.人間中心のイノベーション」では、IDEOによる「ウォルグリーンのコミュニティ薬局」や「米国エネルギー省のためのシフト・フォーカス・プログラム」の事例を紹介しながら、イノベーションの実現を考える際には、「自社にとって」ではなく「社会にとって」の価値を考えることが重要になってきているというお話をしました。自社の売上や利益をあげるにはどうするかを追い求めたのでは「未来を作る」ことはできません。そうではなく新しい社会を生み出すインパクトをもった活動をするにはどうすればよいか?と目標設定自体を変更する必要性があると思っています。もちろん、「イノベーションにつながるアイデアの3つの条件」で書いたように、"人間中心"の有用性だけにフォーカスするのではなく、経済的実現性や技術的実現性とのバランスをとることがイノベーションの実現には求められるにしても、です。

次の「2.社会の共有価値を創出する」では、新しい未来を実現するような社会的インパクトのある活動を行うという視点を、これからの企業がとるべき戦略であると説いたマイケル・ポーターのCreating Shared Value(以下、CSV、社会的共有価値の創出)といったコンセプトも紹介しつつ、CSVの戦略をとって、社会課題を解決する商品・サービスを提供した事例としてGEの「エコマジネーション」や、ゴトレジの貧困層向け冷蔵庫「チョットクール」を紹介しました。

最後の「3.新しいつながりが未来をつくる」では、このブログでは頻出するキーワードの1つである「参加型経済」を取り上げています。その中で、地域社会の一般の人々ともに地域の課題を解決していく事例として、英国サービスデザイン会社のエンジンやライブ/ワークが関わったサービスデザインの例を紹介しています(記事「コミュニティ中心のデザインが求められる参加型社会」でも紹介)。また、日本の事例として、地域主導で社会的イノベーションを目指すproject MARUなどの事例も取り上げています。

2. イノベーションとユーザー体験

こうした新しい自分たちの未来を積極的に作り上げようとしている人々の活動事例なども紹介した話に続いて、「イノベーションとユーザー体験」というパートでは、そうした新しい未来を作ろうとする活動を、それ以前の古いパラダイムで評価してしまうことで活動を潰してしまうような誘惑とは断固として戦わなくてはならないという話をしました。

新しい未来を作る活動を古いパラダイムで評価してしまうことで、つまらない結果に終わってしまうことがないように、慣れ親しんだ評価軸の誘惑を断ち切るためには、立ち向かう課題を傍観者的に他人事としてではなく、課題を解決できなければ自分自身が困ってしまうという自分事として捉えることが必要だと思います。

その点で、私自身もよく耳にする「デザイン思考で本当にイノベーションを起こせるのか?」という問いには傍観者的・他人事的な姿勢が隠れています。そうではなく、自分自身が是が非でも新しい未来をつくるイノベーションを起こさなくてはならないのだと当事者意識をもったのなら、その問いは「(自分が)イノベーションを起こすために、デザイン思考という方法が必要か?」というものに変わるはずです。

そうなのです。イノベーションを起こすかどうかは自分自身であり、デザイン思考という方法ではありません。イノベーションを目指す自分自身のなかで、エスノグラフィーやプロトタイピング等を道具として用いると活動がやりやすくなるのであれば使えばいいし、そうでないなら別の方法を使えばいいのです。

イノベーションの実現を目指す際には、以下の2つの点がポイントになるはずです。

  1. 隠れた機会を明らかにする
  2. 新しいアイデアを実現可能にする

ようするに、解くべき課題そのものを適切につくりだすことと、その課題に対する最も優良で実現可能性のあるアイデアが何かを見つけ出すことの2つです。

「1.隠れた機会を明らかにする」では、メンタルモデルに着目することで、どこに今は存在しないオルタナティブな未来像を生み出す機会が存在するかを見つけましょうという話をしました。先に紹介した事例でもメンタルモデルの理解がイノベーションの方向性を探ることに役立っていたことをあらためて見直しています。

mentalmodel.png

「2.新しいアイデアを実現可能にする」では、人々の体験(UX)を包括的に捉えることが大事だという話をしました。「「顧客の旅」という視点から包括的にデザインを行なう」という記事でも紹介した、FROG designによるプレゼンテーション"Information Architecture: Making Information Accessible and Useful"のなかのSFMOMAを訪れるペルソナが複数のタッチポイントに触れるUXの例やカスタマージャーニーマッピングといった手法も紹介しつつ、アイデアを実現する解を探すためには、人々の体験を重視し、自分たちでも実際に体験してみながら検証していくことで最適解を見つけ出すことが大事だという話をさせていただきました。

3. デザイン思考のメソッド

こうしたお話の流れで「3. デザイン思考のメソッド」では、デザイン思考には先のイノベーションの実現を目指すための2つのポイントそれぞれを助けてくれるツール群が用意されていることを紹介し、個々のツールを私たちの実際のプロジェクトでの使い方も交えつつ、お話しました(公開したプレゼンテーション部分では割愛)。

tools.png

ここでは個々のツールの紹介というより、ターゲットとなるユーザーを中心に、さまざまなステークスホルダーを巻き込みながら、ストーリーボードやプロトタイプを用いてアイデアを視覚化、具体化しながらイノベーションのアイデアの方向性を探り、その形をブラッシュアップしていく、プロジェクトの進め方についてお話しました。

また、私たち自身の事例のほかにも、カスタマージャーニーマッピングを取り入れたメルセデスベンツのプレミアムアフターサービスのサービスデザイン事例や、「サービスブループリントを使って病院のサービスプロセスを分析した事例」でも取り上げたペンシルベニア州ピッツバーグにある病院の神経クリニック部門でのサービス改善事例なども紹介しながら、「顧客の旅」に焦点をあてて、イノベーティブなユーザー体験を生み出すデザインの方法について説明しました。

「未来をつくる方法」

まとめでは、あらためて「社会における生きる前提が大きく変化していく中で、未来をつくりだすイノベーションの方法としてデザイン思考の求められる機会が増大している」点を取り上げました。

そして、エスノグラフィーやカスタマージャーニーマッピング、プロトタイピングなどの手法を用いて、顧客を中心にさまざまなステークホルダーを巻き込みながら、参加型のデザインを行なうことがイノベーションの実現には求められているという話をさせていただきましたが、やっぱり、いま強調したいのは、企業や自治体、NPOなどの各組織の壁を越えて、オープンに連携しながらイノベーションを目指す場の創出がとても重要なのだろうなと思います。

デザイン思考を含め、これからの新しい「未来をつくる方法」はそれ自体が、いろんな人が関わり、模索しながら未来そのものの創出と同時に生み出されていくものだと感じています。大事なことは、従来のような価値観で「このボタンを○○になる」とか「この公式にあてはめれば答えが出る」といったある種、演繹的な思考から離れ、未知の不安な状態を楽しみながら手探りで進むべき道を探っていく思考を楽しめるような姿勢が必要だということでしょう。

「未来をつくる方法」。ぜひ、楽しみながら、いっしょに探していきませんか? デザイン思考に関して興味をお持ちの方は下の「お問い合わせフォーム」よりお気軽にご相談ください。

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