メンタルモデルと観察

| コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリーをはてなブックマークに追加 

6月9日の「未来のユーザー要求を創出する方法としてのデザイン思考」というタイトルで、「観察(オブザベーション)」をメインテーマにしたデザイン思考ワークショップの講師をしてきました。

あいにくの雨の中、40人の方にご参加いただき、1時間の講義のあと、実際に「行動観察」のワークをやっていただきました。実際にやってみる前は、なぜ観察するのか? 腑に落ちなかった方も含めて、参加いただいた方がそれぞれ何らかの気づきを得てお帰りになられたようなのでホッとしています。

ワークショップの様子に関しては、主催の好川さんがブログにまとめてくれています。

最初のエクスサイズは、代表者にゼリーを食べてもらい、その様子を観察するというものでした。2回行い、観察結果を併せて、簡単な利用者モデル像を作ってみるというものでした。

この演習については、人の行動では通常は見落としていることが多いことに気付いた人が多かったようです。

1時間程度の講義とこの「ゼリーを食べる人」の観察のあと、「スケッチをする人」の観察を行なって、計3時間のワークショップは終了になりました。

好川さんの記事中にもありますが、実際にワークで「観察(オブザベーション)」をやっていただいた前と後では、参加者の方々の「観察する」ということの意義の理解も大きく変わったのが感じられて非常に興味深かったです。短い時間の観察でもテーマを絞れば、気づきを与えることができるということを再認識させていただきました。

講義資料「イノベーションの方法としてのデザイン思考」

さて、以下がそのワークショップで使った講義資料です。話した内容が伝わらないので資料だけでは不明な点も多いと思いますが、とりあえず共有しておきます。

この講義では、イノベーションの方法としてデザイン思考を捉える上で、キーとなるメンタルモデルの創出とそのために必要な観察(オブザベーション)を中心に話をしました。前回の記事「メンタルモデルの構築がデザイン思考によるイノベーションに必要な3つの理由」で書いたことをすこし膨らませながら、丁寧にお話しした形です。

メンタルモデルというフィルターを把握する

講義では、「言葉になっていない」こと、人が意識していないことから、未来のイノベーションにつながる潜在的なニーズを発見しましょう、ということをお話しました。

そして、今回のお話のなかでは、人がなぜ意識しないのか? 言葉にしないのか?という理由として、人が世界と関わる際に頭のなかで働くメンタルモデルに着目してみました。

人は世界に接する際、世界を自分で納得できるよう説明するメンタルモデルを作ります。そのメンタルモデルが本当はその人自身が感じるはずのニーズを潜在化し、意識の外に追いやってしまうのです。プレゼンテーションではそれを1つの「図と地」の例として紹介しています。

このメンタルモデルの影に隠れた人びとのニーズを見出すには、何よりまずはそのメンタルモデル自体を理解することが必要です。人それぞれがもつメンタルモデルというフィルターを把握することが求められます。そして、そのための手段の1つが「観察(オブザベーション)」だという話をしました。話を聞くのではなく、観察するのは、言葉や意識のフィルターにかからない、より広い情報を集めたいからです。

言葉になっていないものを観察する

「メンタルモデルを作る」という性質自体がそうであるように、人は世界を自身のさまざまなフィルターで濾過して抽象化しながら理解し接触しています。しかも、そのメンタルモデルは実世界のモデルを正しく反映している必要はありません。自分が生きていく上で支障なく納得のいく説明になっていれば、地面を支えているのが大きな亀や象であってもかまわないのです。

メンタルモデルは、人それぞれが自分のために用意した世界の説明です。そのメンタルモデルはその人自身の行動にも影響を与えます。人は自分自身のメンタルモデルに合うよう、ツールを使ったり、作業をしたりしているのです。だから、観察の対象となる人に自分がしていることについて訊いても、その人のフィルターを通して濾過された残り滓しか得ることはできません。デザイン思考における観察では、そうした意識のフィルターを介していない、まだ言葉になっていないものも含めて観察したいのです。

その「言葉になっていないものを観察する」とはどういうことかを実際に感じていただきたくて、今回にワークショップでは2つの観察ワークをやっていただきました。リフレクション時に参加者の1人がおっしゃっていましたが、「ゼリーを食べる」「スケッチをする」という一見単純に思える行為が実はとても複雑なものであることに多くの方が気づいたことと思われます。その「単純に思える」意識と実際の「複雑な行動」のギャップに、まずは気づくことが大事なのです。そして、その複雑さを個々人がどんな風に単純化して解決しているかを知ること、それが「メンタルモデルというフィルターを把握する」ということなのです。

自分自身の意識が変わる気づきを得ることから...

今回のワークショップでの短い観察時間の中でも参加者の皆さんからは、メンタルモデルを作った上でのソリューション(スケッチをする人を助けるソリューション)のアイデアが出てきました。

もちろん、それがすぐさまイノベーションにつながるアイデアとなるわけではありませんが、そうした自分自身の意識が変わる気づきを得ることが、デザイン思考によるイノベーションの第一歩です。なぜなら「自分自身の意識が変わる気づきを得る」というのは、自分自身のそれまでのメンタルモデルを壊すことでもあるからです。デザイン思考によるイノベーションとは、いまを生きる人びとから未来の革新のありかを隠しているメンタルモデルを見つけ出し、それを壊す方法を見つけることなのですから。

関連記事


この記事に関する皆さんの意見や感想をぜひThink Social Facebookページでお聞かせください。




お問い合わせ

貴社サービスの体験価値の向上や、新しい革新的な公共サービスの立ち上げのサポートなど。
私たちにお手伝いできることはありませんか?
何かお困りのことなどございましたら、お気軽に下記リンクよりご相談ください。

≫お問い合わせフォーム



このエントリーをはてなブックマークに追加 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://labo.coprosystem.co.jp/cgi-bin/MtOS5/mt-tb.cgi/212