巨大な豚に口紅を塗ることがUXをデザインすることではない

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"A Call to Action Regarding Healthcare"と題して、医療サービスにおけるユーザー体験をデザインの視点からどのように変革することができるかが考察されたUX Magazineの記事で、次のような興味深いグラフが紹介されていました。

(参照元:A Call to Action Regarding Healthcare | UX Magazine

記事によると、このグラフはDon NormanとRoberto Vergantiによる論文からの引用で、ほとんどのUXの専門家による人間中心設計が単に漸進的な技術革命にしか寄与できず(グラフのAからBへの変化)、他方でより根本的なイノベーションは技術あるいは意味の根本的な変更(AからBの山から、CからDへのまったく異なる技術や意味への移行)を要求するというのです。

例えば、それはフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行に見られたようなモバイルフォンのユーザー体験価値のイノベーションを指すものであり、まさに、それは"人間中心"といいつつ、あくまで既存の商品カテゴリーの枠内でのみデザインプロセスを回してしまう、狭義のHCDプロセスやUXデザインのアプローチでは生み出せないイノベーションだといえます。

デザイン思考による破壊的なイノベーションを実現する

ただ、本当の意味で"人間中心"のデザインアプローチでユーザーの体験に焦点を当てることで、既存の商品カテゴリーにこだわらない発想ができれば、UXの専門家はHCDの手法を用いて根本的なイノベーションを生み出す発想が可能になります。

先の記事では、AからBの山から、CからDの山への変革をもたらす例として、以下のような表で表現されるような医療サービスのイノベーションを提示しています。

ここで提案されているのは、伝統的な医者(専門家)--患者(素人)の非対称の関係による医療サービスと、一般の人がより積極的に自身の健康を管理でき、医療サービスの提供者はそれをサポートするパートナーとして位置づけられるような参加型医療サービスへの移行です。

記事中では、デザイン思考によるこのような根本的なレベルでのイノベーションがアメリカのヘルスケアの領域では必要とされていると書かれています。

巨大な豚に口紅を塗るデザインプロジェクトを疑おう

記事の最後には、こんな刺激的な記述も見つかります。

"Question the advisability of doing projects that, in essence, only amount to putting lipstick on the very large healthcare pig. "

「巨大な豚に口紅を塗るデザインプロジェクトを疑おう」と。まさにそのとおりで、UXをデザインすることは単に既存のシステムの表面に口紅を塗ることではありません。フィーチャーフォンという枠組みのなかに留まり、AからBへの山を登るためにUIを改良することではないのです。

UXのデザイナーは、既存のシステムそのままにUIやタッチポイントを改善することがUXデザインではないことを理解しなくてはいけません。そうではなく、真にユーザーの観点に立ち、まったく新しい体験価値を生み出すような新しいシステムそのものを生み出す発想を行なうことが真のUXデザインだと理解し、自身のデザインワークを行なう必要があります。

デザイン思考がイノベーションを生み出せるとしたら、商品という枠組みを中心に思考することを徹底した態度で拒否し、人間に着目して、いまは存在しない、まったく新しいユーザー体験価値を実現する枠組みそのものを生み出すために用いられた場合だけです。その根本的な姿勢が間違っていたら、どんなにデザイン思考を用いても真の意味でのUXをデザインすることはできないでしょう。豚に口紅を塗って表面を取り繕うことを考えるのではなく、豚そのものを別の何かにすることで、まったく新しい体験価値を生み出す発想を心がけましょう。それがデザイン思考であり、破壊的イノベーションに新たなUXの創出なのですから。

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