「いまの市場では、単純に優れた製品を生み出すだけでは十分じゃない」
戦略開発コンサルティング会社Motiv StrategiesのCEO、JENEANNE RAEは、Co.Design.にそんなコラムを書いてます。
「偉大な企業は、優れた製品を生み出すだけではなく、さらにサービスを追加した形を取るのだ」と。
→ Great Products Are Nice. But Great Businesses Add Services To Them | Co.Design
サービスへのゲートウェイとしての製品
この記事のなかで、JENEANNE RAEは、様々な製品の例をあげながら、より魅力的なサービスへの通じるゲートウェイとして製品をポジショニングすることでビジネスを成功させている企業の例をあげています。
iTunesやApp Storeを通じて様々なコンテンツやアプリに通じるiPhone、同じように様々な電子書籍を購入し読むためのゲートとなるAmazonのKindleなど、私たちもよく知っている事例をはじめとして、オンライン接続によりGPS情報やTwitter、Facebookなどとの連携ができる時計・Forerunnerに代表されるサービスプロダクトを提供するガーミンなどがその一例です。
以前に当ブログで紹介したLivescribeのsmartpenなども同様の例と言えますが、こうした製品はどれも、ユーザーは製品そのもの機能に期待するだけでなく、その製品をゲートウェイとして利用可能になる様々なサービスの価値に期待して、その製品を利用します。極端な言い方をしてしまえば、iPhoneやKindleなどはサービス利用のプラットフォームでしかなく、それ自体ではほとんど意味をなさないものだと言えるかもしれません。
もちろん、こうした製品はJENEANNE RAEも書いているとおりで、製品そのものの価値以上により大きなサービスの価値をユーザーに届けるというポジションを選択しているからこそ、現在の成功があるのだといえるはずです。
ジーンズも、もはや商品ではなくサービス
製品の価値よりも、サービスの価値を優先しているものとして、JENEANNE RAEは他にも面白い例を挙げてくれています。

→ 3x1
3×1は、過去にEarnest SewnやPaper Denimなど、日本でも知られるデニムブランドを立ち上げたスコット・モリソンが新しく立ち上げたブランド。ただし、3×1がこれまで彼が立ち上げたブランドと大きく異なるのは、それがお客さんそれぞれが欲しいジーンズをオーダメイドで作ってくれるブランドだという点です。ニューヨークにショップがあるそうです。
つまり、3×1は、ジーンズというこれまでプロダクトだったものを、ユーザーそれぞれがオリジナルのジーンズが作れるというサービスに変換してしまったということです。
私自身もジーンズが好きで洗いのかかっていない糊のついた真っ紺のジーンズをはきこんで、色落ちさせて自分のものにしていくのが好きで、元から加工で色落ちしたものよりも自分ではきこんだものにより大きな愛着を感じるのですが、オリジナルのジーンズだとその愛着の度合いはさらに高まるだろうなと感じます。
それは間違いなく、モノを通じて得られる愛着という感情なのですが、従来の形で提供される製品では生み出すことがむずかしかった価値ではないでしょうか。そうした価値を生み出すゲートウェイとして自分たちが作るモノを位置づけている企業が今後ビジネスを成功させるのでしょう。
体験価値にフォーカスして、ビジネスモデルを変換する
この記事では他にも当ブログではおなじみのZipcarや自転車のシェアリングサービスなど、シェアリングビジネスの例もあげられていますが、共通するのはこれらの企業が、これまでのようにモノそのものを買ってもらうことで消費者に価値を提供することではなく、あくまで価値あるサービスや体験を提供するために必要であれば製品も提供しているという点でしょう。ものづくりにこだわることなく、顧客に体験価値を感じてもらえるようなサービスを提供することで、競合優位性の高いビジネスを展開しています。
インターネットにつながった社会は、ソーシャルメディアやモバイル、クラウドなどによって従来の市場環境を大きく変化させ、企業にも従来のビジネスモデルの変換を迫っています。携帯電話の市場もiOSとそれに対抗するAndroidを搭載したスマートフォンの普及によって従来の市場とは競争基準や戦況をガラリと変えてしまい、製品の出来だけでは競争優位性を獲得するのが困難になったように、その他の市場においても同じような変化は今後急速に起こってくるでしょう。
そのとき、顧客の体験価値にフォーカスしてそれが最大になるよう、自らのビジネスモデルを大きく変換し、持続可能性のあるサービスをデザインできた企業が市場での優位性を獲得できるのではないでしょうか。そんな視点からサービスデザインの重要性が増してきているように感じるのです。
