Webサービスとペルソナ(後編)

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前編中編と連載してきた「Webサービスとペルソナ」という記事も今回で最終回となります。

前編では、ターゲットユーザーについての理解を深めるために行なうエスノグラフィー調査について、中編では調査結果をもとにユーザーの行動分析を行なう手法としてのワークモデル分析KJ法を取り上げ、ユーザーモデルであるペルソナを作成する準備段階での作業について紹介してきました。

今回は、いよいよ行動分析によって発見されたユーザー傾向を元に作成するペルソナと、そのペルソナの期待に応えるためのソリューションを考えるためのシナリオ法を取り上げてみようと思います。

利用者ー道具ー目的の関係として、ユーザーをモデル化する

まず、何故ユーザーモデルであるペルソナを描くのかという点をあらためて整理してみましょう。

当たり前のことですが、ペルソナはWebサービスを作る上での目的ではなく手段です。あくまでWebサービスをどうデザインすればよいかを考えるためにユーザーをモデル化するのであって、その目的とは無関係なモデル化を行ってもあまり意味はありません。

では、どうすれば「Webサービスをどうデザインするか?」を考えるという目的に応じた形で、ユーザーのモデル化ができるのでしょうか。それにはユーザーを単独で捉えるのではなく、以下の図のように「利用者」「道具(Webサービス)」「目的」の関係性としてユーザーを捉えることが必要です。

ターゲットとなるユーザーがサービスを利用して「何ができる」と期待するのか、利用過程での体験面で「どうできる」ことを望ましく感じるか、逆にどんな体験を不満に感じるかといったことを考えられるようにするのがペルソナというユーザーモデルです。それを考えるために必要なユーザー情報を行動分析で得られたユーザー傾向を元にまとめていった結果がペルソナとなるのです。

ペルソナを作成することで、ユーザーの体験価値を高めるためにはどうすればよいかを考える

ペルソナは「利用者」「道具(Webサービス)」「目的」の関係性としてユーザーを定義するモデルですので、当然、デザインしようとしているサービスが異なれば、ペルソナにどんな情報を含めればよいかも変わってきます。

ですので、ペルソナを作るのにテンプレートのようなものはないのですが、ペルソナがサービスを用いる際の「役割」と「目的」、「ゴール」は最低限含めることが必要になります。

その他ではペルソナがサービスを利用する際の物理的環境や心理的状況、サービスに対するリテラシーや態度、利用経験なども、Webサービスをどのようなものとしてデザインすべきかを考える上では有効な情報になるはずです。

一般的に、サービス設計の際に考えるべきユーザー要求は「何ができる」というアウトプット欲求と「どうできるか」というサービス欲求に分けられます。モノやサービスが飽和し商品/サービス間で「何ができるか」といった面での差異がつけにくくなっている市場環境においては、「どうできるか」というよりユーザーの体験価値に結びつくサービス欲求を満足させることが求められるようになっています。

その意味では下記の例のペルソナシートのように「役割」「目的」「ゴール」や「行動傾向」をモデル化した上で、「ペルソナの体験をどう変えるのか?」といった項目を含めるのもよいでしょう。

「何ができる」というアウトプット要求だけを考えてしまうと、つい機能面の検討ばかりに偏りがちです。反対に「体験をどう変えるのか?」といったサービス欲求の面から考えることで、サービス体験価値といった、より統合された視点から統一されたトーン&マナーをもったサービスをデザインすることが可能になります。つまり、隅々まで気配りが行き届いたサービスにするためには、「ペルソナの体験」という視点からサービス全体を設計することが求められるのです。

ユーザーの旅をモデル化する

さて、今回あらためて「Webサービスとペルソナ」というテーマでブログを書こうと思ったのも、その「体験」の重要性がより高まってきている傾向が見られるからです。Webやネット上の話だけではありません。世界的な規模で市場動向がよりサービスの体験を価値が重視される傾向になっており、さらに、その体験価値の高いサービスを生み出す際にデザイン思考に期待される傾向が見られるのです。

先日、ホームページのコラム(→「エスノグラフィーと体験のデザイン」)にも書きましたが、欧米ではデザイン思考をよりビジネスに結びつける方向性としてサービスデザインに対する注目が集まっています。サービス利用時に限らず、その前後も含めて、様々なタッチポイントでサービスを体験するユーザーの旅をいかに満足度の高いものにするかを目的として行なうサービスデザインにおいては、物理的なモノのデザイン以上に人間中心のデザインのアプローチが求められているのです。

同じことはWebサービスにも言え、様々なデバイスを通じて様々なシーンで利用されるサービス全体を設計するためには、モノ中心の発想で、デバイスごとにバラバラにサービスを設計していたのでは、トータルとしてのサービスの体験価値を高めることはできません。サービスの体験価値を高めるためには、ユーザーが自身の「目的」を達成するために辿る道筋の側から、どんな場面で何を行なおうとしてどのデバイスからサービスを利用できることを期待するのかを明らかにした上で、サービス全体を設計していく必要があります。

ユーザーの旅の道のりをモデル化するのです。

サービスデザインの手法としても、カスタマー・ジャーニー・マッピングサービス・ブループリントと呼ばれるモデル化手法を使って、ユーザーがサービスを利用する際の道筋を描きます。視覚的にユーザーの利用シーンと様々のタッチポイント(デバイス)で求められる機能などとの関係を明らかにすることで、最適な体験を演出できるようにするのです。

同じように、様々な利用シーン、様々なタッチポイントにおけるユーザーの利用行動を物語風に描くことで、ユーザーの理想の利用体験を明らかにする手法がシナリオデザインです。

シナリオデザインに関しても、ペルソナ同様、決まった表現方法や記載項目はありませんが、例としては以下のような形で、特定のシーンにおけるユーザーとサービスの関わり方を記述します。

下のケースでは「シーン4」とあるように、このシーン以前にすくなくとも3つのシーンがペルソナのサービス利用の道のりには存在しているということになります。

実際デザインする際には、物語で表現するシナリオデザインと、カスタマー・ジャーニー・マッピングやサービス・ブループリントのような視覚的なモデル化手法の両方を使うことが多いです。テキストと視覚化の両面からモデル化して見ることで、よりユーザー体験を多角的に検討することができるからです。

このような流れで、ペルソナというユーザーモデルと、その体験をモデル化したシナリオやマッピングを作成することで、サービス要件の要素が明らかになります。Webサービスであれば具体的なシステム構造やUIデザインを考えるのは、このユーザー視点での要件が明らかになってからでしょう。

見えないサービスをデザインするために...

今回3回にわたって「Webサービスとペルソナ」というテーマで記事を書いてきました。それは先にも書いたように、これまで以上に「体験」「サービス」という視点が重視されてくる中で、モノを作ることを目的としないデザインの姿勢が求められてくるはずだと感じているからです。直接は目に見えず、触れることもできないサービスや体験をデザインしていくためにも、今回紹介したようなデザイン思考の取り組み方が必要になってきているように思います。

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