Webサービスとペルソナ(前編)

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新規でWebサービスを企画し立ち上げる際、あるいは、既存のWebサービスを改編してユーザー体験を向上させようとする際、皆さんはターゲットと想定するユーザーの期待や要求について考えるためにユーザーモデルであるペルソナを作っているでしょうか?

ペルソナを作るプロセスを経ずにサービス内容を決め、サイトをデザインしてしまったばっかりに、ユーザーにとっては魅力のないサービスができてしまったり、魅力は感じられても実際に使ってみると非常に使いづらく使えないサイトができてしまったりしていないでしょうか?

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Webサービス提供者の視点やサイト構築者の視点だけで、サービスを企画し、サイトのデザインを行なってしまうのは、ターゲットと想定するユーザーと自分たちの間にあるメンタルモデルのギャップを無視してしまうのと同じことだと思います。とうぜん、自分たちがエンゲージメントを結びたいユーザーとの間のギャップを考慮するつもりがなければ、そのサービスが成功することを期待するのは難しいでしょう。

自分たちの偏った見方を脱するためのペルソナ

ペルソナは、サービスを利用するユーザーをモデル化したものですが、作成結果のモデルだけが手に入ればよいというわけではありません。

それ以上に、モデルを作成する過程で、ユーザーについての様々なことを把握し、ユーザーの抱える課題を理解したり、ユーザーの期待に応えるための方策を考えることが重要なのであり、その作成過程は単純にサービス提供者としての立場、Webサービス設計者の立場でアイデアを考える場合とはまったく別の視点をWebサービスの企画者、設計者に与えてくれます。

「ペルソナを作る」というと単純にターゲットユーザーの性格や行動の傾向を把握しモデル化するだけの作業であるかのように誤解している方が少なくないと思いますが、実際はユーザーモデルを作成する作業をすることを介して、自由な発想を疎外している自分たちの偏ったモノの見方をしてしまっている状況を打破する機会を与えてくれることのほうに価値があります。ユーザーを知るというのは、何より自分たち自身の思い込みに気付くことであり、それによって自分たち自身の考えや姿勢が変わることです。ペルソナを作成する過程でユーザーについて考えることで、自分たちの思い込みに気付くことにこそ意味があるのです。ペルソナを作成するのは、自分たち自身の考えを変えるためです。

サービス提供者の都合でしかない自分たちの思い込みに無理矢理ユーザーを押し込めて、現実には起こり得ないユーザーの心の動きや行動を想定してサービスのアイデアを考えたところで、それが自分たちの思い込みを超えることはありません。そうではなく、ユーザーについて考えることで、自分たち自身の側に変化があるからこそ、ユーザーの期待に応えるWebサービスの企画やデザインにつながるアイデアは生まれるのです。自分たちを変えることもできない思考が、人びとの暮らしや仕事の仕方を変えるようなサービスのアイデアにつながることはないでしょう。自分を変えられない人が、他人を変えられるものを生み出すことはできません。

ユーザーの行動を実際に見ることで把握する

自分たちの思い込みに気付くこと。自分たちの立場から考えるのではなく、自分とは違うユーザーの立場に立つと何が見えてくるかを必死につかもうとすること。

そのためにも、ペルソナを作成する際には、Webサービスのターゲットとなりうるユーザー層が、日常的な暮らしや仕事における作業や業務を行なっていて、それをどう行い、何を期待しているのか、またその作業や業務上、どんな課題を持っているかなどを、エスノグラフィーなどのユーザー行動観察調査によって把握します。現場で実際のユーザーの行動を観察するのは、ユーザーに話を直接聞いただけではわからないことが、現場で観察すれば文字通り「見える」からです。

現場で観察する行動も、Webサービスの企画設計のための調査だからといって、自社のWebサービスをどう使っているかだけを見せてもらっても意味はありません。Webサービスの利用に関して調べるにしても、普段、ほかにどんなサービスをどんな時にどんな風に使ってて、具体的にどんなところが気に入っているか/不便に感じているかなどを具体的に画面を見せてもらいながら話を聞いたり、Webサービスを利用する以外でも関連する作業を行う際に、利用しているもの(書籍やテレビなどのメディア、記録をとったり情報を整理したりするのに用いる文房具など)はないかなどを観察&インタビューで把握しようと努めることが大事です。

ユーザーはWebサービスを使いたいわけではなく、何らかの目的をもって行なう作業の一貫として道具であるWebサービスを利用します。ですから、Webサービスをどういう形にすれば、ユーザーが喜ぶのか?という偏った見方で、行動観察しても自分たちの発想を変える発見は得られません。そうではなく、ユーザーの作業全体はどういうものなのか、作業において何が行なわれていて、Webサービス以外にどんな道具が、どんな方法で使われているのかといった視点で観察を行なうことが必要なのです。特に、ユーザーが作業を行う際に用いる用語や情報整理の仕方などを理解することは、Webサービスにおける情報設計を行なう上でも重要な示唆を与えてくれることが少なくありません。

リアルタイムで現場での作業や業務を観察することがむずかしい場合は調査会場で調査を実施しますが、その際でも対象となるユーザーに、普段の作業や業務の様子がわかるように生活や仕事の現場の写真や、作業で使っている道具などを持参していただいた上で、できる限り、Webサービス提供者が考えるユーザーの作業全体ではなく、あくまでユーザー自身にとっての作業全体を把握できるよう準備することが大事です。

観察結果のメモを作成する

ユーザー行動観察調査を行う上でのポイントの1つは、行動観察の結果をしっかりメモに残すことです。

メモを作成すること自体、自分たちが見たことを解釈する作業だからです。その解釈作業によって、観察前と何も自分たちの考えが変わらないのであれば、それはおそらくユーザーの行動の意味を無理矢理自分たちの思考の枠組みに押し込めているだけなのです。そうではなく、メモを作成し、そのなかで自分たちが見たことの意味を解釈し、その解釈自体で自分たちの見方が変わることが、ユーザー行動観察調査では期待されるのです。メモを作成するというのは、そうした発見の機会を逃さないために必要な作業であり、この過程を録画や録音だけに頼ってしまっては、せっかくの自分たちが変わる発見のチャンスを逃してしまうことになるのです。

ユーザーの行動を直接観察すれば、1つの事実を見たのだから、その解釈がぶれることはないと考える方もいるかもしれません。しかし、実際には同じものをみても、人は違った解釈をするのです。だからこそ、同じユーザーインターフェイスを見ても使い方を勘違いするユーザーがいるのであり、その間違い方も千差万別だったりするのです。事実は誰が見ても同じだと思っていること自体が誤解であり、観察結果が人によって異なるからこそ、そこに思い込みからの脱出機会が生まれてくるのです。そして、その脱出機会をつかむための最初の手段が観察結果をメモに落とし込むという作業のなかにあります。記述するということ自体が、理解すること、思考することですので、メモの作成という作業をおろそかにしてはいけないのです。

もちろん、調査の結果の解釈〜分析は、調査結果のメモを作成するという最初の段階のあとも、ワークモデル分析やKJ法などの質的データの分析手法を用いて行ない、そこでの解釈〜分析をもとにユーザーモデルであるペルソナを作成していくのです。

このプロセスに関しては、今回は長くなったのでここまでとして、続きは次回、年明けの記事で書こうと思います。それでは、2012年もブログ「市場のお手入れ」と弊社コプロシステムをご贔屓いただけるよう、よろしくお願いいたします。

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