ユーザーテストと製品のクオリティ

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昨日の「ユーザーテストを実施する」という記事に引き続き、今回もユーザーテストの必要性について書いてみます。

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ユーザーテストの必要性を考えるにあたって今回は、ゲームジャーナリストの新清士さんという方のブログ記事のこんな引用から話をはじめようと思います。

北米で一般的なユーザーテストは、そのゲームについて詳しい情報を伝えられていないユーザーが集められ、そのゲームを突然遊ぶことが行われるのだ。ユーザーの操作はすべて画像として録画され、どこの部分で、どのような感情表現を伴い、ユーザーが面白いと思ったのかどうか、インターフェイスで迷ったりしていないか、マップ内でも混乱していないか、といったことが心理学修士号や博士号を持った専門家の立ち会いの元にチェックされ、分析される。それは、ゲーム開発者にとっては、地獄のような経験である。例え、ゲームの質を引き上げることがわかっているとしても。

この記事では、北米で開発される多くのゲームが1~2週間ごとにユーザーテストに回され、上に引用したような専門家によるチェック、分析が行なわれ、ゲームのクオリティを向上させる作業が重ねられている様子が、マイクロソフトのユーザーテスティングラボの事例も交えながら、伝えられています。北米では、こうしたユーザーテストを重ねてゲームの質をあげていく開発手法の有効性がこの5~6年のあいだに業界で広まったのだそうです。

製品の質を上げる方法論としての反復型開発プロセス

そもそも、この話は「誤って理解してほしくない日本的「デバッグ」と欧米の「ユーザーテスト」の違い(上)」で語られる「なぜ、日本のゲームはこの10年で急激に海外勢に押されることになったのか、という議論が、やっと日本国内で真剣に議論されるようになりつつある」という話に端を発しています。著者は"ゲームの質を引き上げていく方法論として、「イテレーション(反復型開発)」プロセスを重視"したことを北米勢の躍進の要因の1つとして挙げているのです。そして次のように、北米と日本の企業の取り組みの差を指摘するのです。

一方で、こうした、ユーザーテストをしっかりさせた日本の会社は、この5年現れていない。そのため、実際にリリースしてみて、ゲームの完成度がイマイチだったり、とんでもない出来のものであったり、大味だったりということが相変わらず起きている。

この引用にある「実際にリリースしてみて、ゲームの完成度がイマイチだったり、とんでもない出来のものであったり、大味だったり」という話は、まさに昨日の記事での「どんなに優れたアイデアを実現した商品/サービスでも、ユーザーが実際に利用する際の体験に何かしら問題があれば、ユーザーに使ってもらえない可能性があります」という指摘と同様のものです。

反復型の開発プロセスがまとめられてすでに10年の月日が...

ユーザーとデザインを行なう側のギャップを埋めていくことをデザイン過程に盛り込んだ反復型開発プロセスであるISO13407として人間中心設計プロセスが国際規格としてまとめられたのが1999年。多くの日本の家電メーカーもほぼ同時期にこのプロセスの導入に取り組んでおり、すでに10年以上の月日が経過しているわけですが、残念ながら、そのデザインプロセスを自分たちのものにしている企業は、そう多くはないと思います。「デザイン思考」のアプローチと同様にプロトタイプを作り、それをユーザーの評価の目に晒しながらブラッシュアップしていくというイテレーション型の開発により、消費者に認められる質の高い製品を生み出せていないと思います。

一方で、"iOS Human Interface Guidelines"(参考:PDFによる日本語版)の中で「 プロトタイプの作成と反復使用」についてうたっているアップルや先のゲームの事例でも登場したマイクロソフトを代表に、北米では多くの企業がプロトタイピングやユーザーテストを含む、ユーザー参加型の反復開発型のプロセスを通常のデザインプロセスに盛り込んでいます。まさにゲーム業界と同様の違いがみられるのです。

ユーザーテストを当たり前に行なえるよう開発プロセスを再編する

ユーザーテストを開発プロセスに組み込む提案をさせていただくと、決して少なくない頻度で「開発期間のことを考えるとユーザーテストを何度も実施している時間はない」という理由でお話をいただくことがあります。しかし、ユーザーテストを含む反復型開発プロセスを取り入れないことで生じてしまうユーザー視点でのクオリティの差を埋めるのに必要な時間を考えれば、あらかじめ開発プロセスにユーザーテストを組み入れるための時間をとることなどは大きな問題にはならないはずです。手間を省くために、市場で戦っていけないほど、競合他社と製品のクオリティに差がついてしまうなんてことは論外ですので。

これも10年以上前に日本語版が出版されている『ソフトウェアの達人たち』という本の中で、ローラ・デ・ヤングという方が次のように書いています。

ユーザーと話をしないことには、限りない数の言い訳がある。「どんなものが必要なのかはわかっている」「時間がない」「難しすぎる」「お金がかかりすぎる」「社員をユーザーのところへやることはできない。重要な情報が漏れてしまう」「ユーザーはいつも自分が何が欲しいかわかっていない」など。

ローラ・デ・ヤング「ソフトウェア・デザインを支える組織」『ソフトウェアの達人たち』

「ユーザーと話をしない」言い訳なら確かにいくらでもできるでしょう。しかし、市場において圧倒的についてしまった差を埋める努力をしない言い訳をビジネスにおいてすることはむずかしいのではないでしょうか。

そうした言い訳を必要としなくても済むようにするためにも、ユーザーテストを盛り込んだ反復型の開発プロセスとして、自社のデザインプロセスの再編を実現していく必要に迫られている時期ではないかと思います。

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