ペルソナ(ユーザーモデル)を作る

ペルソナとは、人びとの生活の現場での観察や調査会場などでのインタビューから知り得た、人びとの生活行動を元に作成する、仮想のユーザーモデルです。

人間中心のデザインではよく使われる手法のひとつであり、私も著書『ペルソナ作って、それからどうするの?』のなかで、ペルソナを用いたデザインの方法の一連の流れを消化しています。

ペルソナとしてターゲットとなる人びとの人物像を表現することで、製品やサービスのターゲットとなる人びとがどんな人で、普段の生活で何を目的としてどんな行動を行っているか、その行動によってどんな結果を期待しているのかを明確していきます。これは「ISO13407:インタラクティブシステムのための人間中心設計プロセス」で紹介したプロセスの中の「ユーザーと組織の要求事項の明示」の工程にあたります。

デザインに関わるメンバーは、ペルソナを作ることで、人びとの生活のなかでの製品/サービス利用機会やその利用目的・利用する際のゴールを明らかにすることができ、背後に隠れたターゲットのウォンツの検討が可能になります。

KJ法の結果から人物像を描くための要素を抽出

ペルソナを作成する手順は、ざっと以下のような3つのステップで行われます。

  1. ターゲットセグメントである人びとの生活行動を「コンテキスチュアル・インクワイアリー」などの手法を用いた観察&インタビューによる調査で明らかにする
  2. 調査で知り得たデータを「ワークモデル分析」や「KJ法」などの手法を用いて、分析・解釈をする
  3. 分析・解釈を経て抽出したユーザーグループの特徴、行動の傾向を元に、ユーザーモデルとしてのペルソナを表現する

1.と2.の流れに関しては、すでに「コンテキスチュアル・インクワイアリー(文脈的質問法)」や「ワークモデル分析:行動とコンテキストの関係を明示する」、「KJ法で質的データの分析を行う」といったエントリーで紹介していますので、そちらを参照いただくとして、ここでは繰り返して述べることはしません。ただし、そうした手順を踏んだ上ではじめて具体的にユーザーの傾向をモデル化するペルソナの作成に入れるのだということは、ここであらためて確認いただければと思います。

さて、前回の「KJ法で質的データの分析を行う」というエントリーでは、KJ法を行った結果として下の写真のイメージを紹介しました。
調査で知り得た人びとの行動に関するデータを類似する内容ごとにグループ化し、そのグループごとに傾向を要約した形の表札をつけて整理することで、そのユーザーグループの傾向が見えてきます。

こうして調査データをKJ法を使って分析・解釈した結果をもとに、ペルソナを描くための要素を抽出していくのです。具体的には上の写真のように、KJ法では「表札付け」という作業で、手書きで各データグループの傾向をまとめた解釈をどんどん書き込んでいきますが、それがペルソナを作成する際にユーザーグループの特徴をあらわす要素となるのです。

今回はその要素をあらためて整理するために、下の写真のようにいったんデータ化しています。

これは前回紹介したKJ法の「文章化」という作業にも相当します。図式化しただけでは見えない関係性が文章として書き直すことで見えてきたり、図で書いた関係性のおかしなところに気づいたりしますので、この工程も実は以外と大切です。

人物像を描く

ここまでがペルソナを描き始める前の準備段階です。人物像を描くための要素を抽出しておくという準備が終わったら、いよいよ具体的な人物像としてペルソナを表現していく作業をはじめます。

ペルソナを表現する作業は1人でもできますが、私はワークショップ形式でのグループワークでの作成をおすすめしています。1人で作業をするよりも、グループで作業をしたほうが視点が偏らず、かついろんな方向から人物を考えることができるという利点があるからです。

グループワークでペルソナを作成する場合はまず、下の写真のような台紙を作るといいでしょう。

あらかじめどんな情報の記述により、ペルソナの表現を行うのか、骨格となる構造だけを見出しとして抽出して表形式の台紙を作っておくのです。どんな見出しが必要かは、すでにKJ法でユーザーグループの行動全体の構造が見えているはずですので、そこから抜き出せます。

こうした準備をした上で、具体的な人物像のイメージをグループで議論しながら決めていくのです。3-5人のグループで、ひとりが司会者、ひとりが書記となって、必要な項目を埋めていきます。

そんな議論を経て完成したペルソナは、こんな感じでデータ化するとよいでしょう。

ペルソナの役割/目的/ゴールを明らかにする

ペルソナに記述するべき内容に決まりはありませんが、以下のような事柄はぜひ記述に含めたいところです。

  • 役割:ペルソナが製品/サービスを利用する時、利用しようと考える時、ペルソナにはそうしなければいけないどんな理由があるのか、役割があるのか?
    cf. 「小学生になる前の小さな子供に毎日、朝昼晩の三食のご飯を作って食べさせてあげなくてはならない」、「毎日の家から会社までの45分間の通勤時間の空いている時間に、自分自身を退屈させず、かつ時間を有効に過ごせる手段を与えなくてはいけない」など
  • 目的:ペルソナは何のために製品/サービスを利用した行動をするのか?
    cf. 「朝は保育園に行く時間までに食べさせなくてはいけないし、夜もお腹が空いたとうるさいので、毎日決まった時間に食事を作り終える必要がある」、「会社で仕事中はプライベイトなことでインターネットは見れないし夜もなかなか時間がとれないので、通勤中にできるだけプライベイトな情報収集をしておく必要がある」など
  • ゴール:ペルソナは製品/サービスを使うことで具体的にどんな結果を得たいのか?また結果を得るプロセスで期待するもの/忌避したいものは何か?
    cf. 「とにかく時間通りに子供が食べてくれる料理を用意する。自分も仕事から帰ってきて疲れていることもあるのでできるだけ手間がかからないよう簡単に」、「毎日チェックしているWebサイトがいくつかあるので、通勤時間中にそのチェックを効率的にし終えたい」など
  • 利用時の前提条件/制約条件:ペルソナが自身の役割に応じた目的で、製品やサービスを利用してゴールにたどり着こうとする際、どんな環境要因やペルソナ自身の内定条件が前提条件や制約条件となりうるか?
    cf. 「下の子が小さくて、時々、部屋の中のものを壊したりすることがあるので料理中も目が離せない」、「電車のなかは超満員ほどではないが混んでいるので片手ですべての操作をしたい、手が小さいのでなるべく小さく軽い方がいい」など

ペルソナはもともと、インタラクションデザイナーであるアラン・クーパーが提唱している人間中心のデザインの1つの手法であるゴールダイレクテッドデザインのなかで用いられる手法です。
ゴールダイレクテッドデザインは、その名の通り、ユーザーをゴールにダイレクトに(使い方がわからず迷ったり、求める結果と違う結果が得られたり、動きがもたもたしていて苛々させられたり、といったことがなく)導くためのデザインをすることを目指すデザイン・アプローチです。

ですので、上に挙げたリストの中でも、何がペルソナにとってのゴールなのかを明らかにすることが最も重要になります。また、ペルソナにとってのゴールは、その人がどんな役割があると自分で認識しているか、その役割の目的は何かということにも関係しています。目的があって、その具体的な達成を示すものがゴールです。そして、ペルソナを取り巻くさまざまな環境要因、ペルソナ自身の知識や経済的制約がペルソナがゴールに至る道程を妨げることもありますので、製品/サービスのデザインを考える際にもそうした点を考慮する必要があるでしょう。

このようにペルソナの記述を考える時には、その製品/サービスはユーザーにとって何であり、それを使うユーザーはどんな役割をもった人なのかということと同時に、ユーザーは具体的にどんなゴールにたどり着きたいのかを明らかにすることが必要です。
それがペルソナで表現すべき事柄であり、それが明らかになることで、ペルソナが何を欲しているか(ウォンツ)を考えることができるようになるのです。

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