Archive for the ‘マーケティング’ Category

道具のデザインから、スタイルの提案へ

火曜日, 6月 1st, 2010

人びとに求められるものをどう生み出していくかを考えていく上で、商品を単体で捉えるのか、あるいは、その商品が使われるライフスタイル全体を対象として捉えるのかでは、大きな違いがあります。

個々の物をどうデザインするかという視点がある一方で、それらを組み合わせた場のしつらえをどうするかという視点がもう一方にはある。

例えば、茶の湯においては、道具や花、書を用いた茶室のしつらえがその見立てを通じて和歌や漢詩の情景を想起させながら、そこに茶の作法が結びついて一座建立の遊びの場が創造されます。

これは茶の湯という特別な場を想起せずとも、私たちの日常生活に目を向けても同様です。

料理などはその典型でしょう。
料理をする際はガスコンロならガスコンロにだけ向かい合っているということはありえず、常にコンロの上におく鍋やフライパンとも、同じ並びにあるシンクや作業台とも、はたまた、道具や調味料が入った物入れや食材の入った冷蔵庫との関係性において、料理という一連の作業が行われます。

人びとの日々の暮らしは、個別の商品と1対1で向かい合っているというよりも、複数の物や人が存在する空間に囲まれているという方がより現実に近い。
それは日常の風景を写真に撮ってみれば明らかになることで、生活の現場の写真はショールームや広告イメージのようにはならず、1つの商品のまわりに他のさまざまな商品が雑多に写りこんでいるはずです。

こうした連続的な作業を成り立たせるためには、道具主義的に個別商品のデザインをするだけでなく、作法などのソフトウェアもふくめたスタイル提案が欲しいところです。

使う人を含めてはじめてシステムと呼べる

キッチンの例で話を続けますと、いまのキッチンはシステムキッチンが主流です。
でも、その場合の「システム」とは何でしょう?

山口昌伴さんという方が書いている『台所空間学』という本に、こんな一節があります。

西欧では、調理道具を飼いならすことが躾の重要なポイントであった。銀器・銅器・錫器などの金属器を磨きあげ使いこんで代々の家宝として伝えた。調理と道具の間に密接な関係がマニュアル化されており、永年のマニュアル運用から、何がどこにあるか、ということが身に備わっているのである。空間の秩序を守るためには、行動の作法が確立されねばならなかったのである。それは茶道の修養を想起すればわかろう。一服の茶を喫するにも、修練を積んだ作法がなけば道具は叛乱を起こす。
− 山口昌伴『台所空間学』

山口さんは、同著のなかで、こうした「作法」を身につけ、それを躾によって代々伝達する文化をもった西洋でこそ、システムキッチンがシステムとして機能することを指摘しています。
一方で、そうした「作法」のないまま、個々の道具の寄せ集めとしてシステムキッチンなる家具を導入してしまった日本の近代の台所の問題を提起しています。

システムはそれを人が使ってはじめてシステムと呼ぶことができます。
人が使わなければシステムとして機能しませんし、使ってくれる場合でもその人の行動が余計に混乱するようではシステムではないでしょう。

日本の台所の話でいえば、ピカピカときれいなシステムキッチンは、煙をモクモクとさせながら七輪でサンマを焼くことにも、泥だらけの野菜を調理することにも、親戚一同を集まるお祝いの料理を複数の女性が共同で行うのにも向かず、むしろ、かつてのシステマティックに作られていた土間、かまど、いろりといった台所のシステムを崩壊させてしまっています。

Twitterが生み出したスタイル=作法

使う人がそれをどう使うかも含めてシステムであるという場合には、ハードウェアやソフトウェアといった物的な面で狭義のシステムを設計すればよいだけでなく、同時にそれを使って行う作業の作法やその作法の伝達も同時に考慮しないといけないということです。

例えば、Twitterにしても、単純に140文字のTweetができる仕組みだけではサービスとして成立せず、実際にそれを使うユーザーがつぶやくための作法が確立してきたからこそ、今のような盛り上がりを見せているといえるはずです。
この点で、Twitterというサービスのデザイン(サードパーティーの提供する様々なサービスも含めて)は、ユーザーの間で自然に作法ができあがってくるのを促すことにある程度は成功したと言えます。
特に日本では、iPhoneでTwitterを使うというスタイル=作法が確立されたのが、この盛り上がりのポイントでしょう。

ただし、一方でその作法の伝達が行われず、いまだに「何をつぶやけばいいのかわからない」と感じている人が、利用に踏み込めないケースも少なくないのも事実で、ここに課題を残しているのも確かです。

形式知化が可能な作法と、暗黙知にとどまる作法

商品やサービスが人びとに使われることを望むなら、こうした作法=スタイルが自然に生まれてくるような市場環境を設計・準備することが今後ますます必要になってくるのではないかと思います。

単純にひとつの商品の形状や機能をデザインするだけでは足りず、それが使われる際のスタイルがユーザーの間で自然と生まれてくるために必要な条件をクリアしておかなくてはいけません。

その際、考慮すべきことは、作法=スタイルには、形式知化が可能なものと、そうではなく暗黙知にとどまり続けるものがあるということでしょう。つまり、言葉や視覚的なイメージを使って意図的に伝えることができる作法=スタイルと、より体験的に実際に使ってもらうなかでユーザー自身に気づいてもらうしかない作法=スタイルがあるということです。

先のTwitterの例でいえば、@やRTの使い方は言葉で教えることができても、そもそも何がおもしろいのかは使ったことがない人にはなかなか教えられない部分があります。
ここにTwitterを楽しむための暗黙知的な作法=スタイルが含まれるはずですが、それは「とりあえず使ってみて」といい、相手が実際に使って楽しみを感じてもらうことでしか伝わらないものです。

ソーシャルメディア/ソーシャル消費の時代のデザイン

ただし、商品やサービスをデザインする場合は、この形式知化できない暗黙知的な作法=スタイルも考慮する必要がある。そこにしっかり目を向けて、自然と使い方、ノウハウがユーザーの間で生まれてくるためには、何が必要なのかということを考慮して、商品やサービスを設計するのとそうでないのとでは雲泥の差が生じるはずです。

ある意味では、そうした面にいかに目を向けた設計ができるかどうかが、このソーシャルメディアの時代、ソーシャル消費の時代のデザインの課題ではないでしょうか。

誰に何をどこで伝えるか?

金曜日, 2月 19th, 2010

Twitterを利用する人の増加の勢いが止まりません。
バンクーバ・オリンピックを見ている人の実況中継的なつぶやき(#gorin)をみても、時間帯によっては数秒ごとに10件、数10件単位で増える勢いです。

こうした流れの中、企業も自社のマーケティングにTwitterの活用を模索し、公式アカウントで担当者が人力でつぶやいてみたり、botを活用したりと様々なケースが見られます。

モバイル、ソーシャル、リアルタイム

Twitterだけでなく、こちらもユーザー数が増え続けているiPhoneユーザーを狙ったマーケティングコミュニケーションも加えた最近のマーケティングコミュニケーションの流れは、シリコンバレーのベンチャーブログA VC主宰のFred Wilson氏が、ゴールデントライアングルと呼んだ「モバイル」「ソーシャル」「リアルタイム」という現在進行中のWebの3大トレンドを反映したものと捉えることが可能です(「ネットバブルから10年、成長のカギはモバイル・ソーシャル・リアルタイムへ:IT-PLUS」参照)。
短期間で400万人超の利用者を獲得したサンシャイン牧場が話題となったmixiアプリなども、ソーシャル、モバイルといったトレンドをきっちりと抑えたコミュニケーションの形態であり、こちらも企業のマーケティングコミュニケーションの1つのパターンとして今後注目を集めるのではないかと思います。

景気低迷期におけるマーケティング戦略の効率化

ただし、こうしたマーケティングコミュニケーションの手法のトレンドも、そもそも何を目的としたコミュニケーションであり、誰をターゲットに、何をゴールとして行うかが明確になっていなければ、評価のしようがないものとなってしまいます。
目的、ゴール、ターゲットが明確でなければ、何を測れば評価となりうるのかが決まりません。効果を測る方法がないのではなく、測定する基準がそもそも明確ではないからです。経営的にみれば、こんな無駄なことはありません。

特に昨今の景気が低迷する状況で、マーケティング予算も絞られる中、全体的なマーケティング戦略のなかで各コミュニケーション施策それぞれにどのような目的を位置づけ、どういった効果を得ていくかという統合的な評価の視点は、効率的な予算配分を行うには不可欠なものでしょう。

全体的なマーケティングの課題のなかで、どのようなターゲットにどのような行動を促すことが必要か、そのためには、どこでどんなコミュニケーション施策を実施する必要があるか。そうした視点に立って、商品のポートフォリオ、チャネル戦略、価格、そして、コミュニケーションの統合的に組み立て、課題の解決を図ることが本来マーケティングには求められているはずです。

しかし、実際にはそうした自社のマーケティング上の現状の課題を俯瞰的な視点で眺め、将来のあるべき姿を思い描くための事実データを欠くケースが少なくないでしょう。

誰に何をどこで伝えるか?

自社のマーケティングの課題を包括的に捉えるためのベースとなるデータ・分析を欠いているために、マーケティング戦略の立案、施策の組み立てが勘頼り、行き当たりばったりになってしまう。

こうした課題をお持ちの企業の方々に対して、弊社では、ターゲットを明確化した上で、マーケティング上の課題を整理し直し、マーケティグコミュニケーションの目的やそれに対応したゴールやマイルストーンの設定をするサポートをさせていただいています。

調査に基づいてユーザーグループのセグメント化を行い、各セグメントに仮想のユーザー像としてのペルソナを立てた上で、上記のイメージのように各ペルソナに対する商品戦略、価格戦略、チャネル戦略、コミュニケーション戦略を明らかにします。

誰に、何を、どこで、どうやって伝えるか?
何が得られれば施策の成功と見なすか?

マーケティング戦略を各施策へ落とし込むにあたってそうした事柄を、ユーザーセグメントをベースに整理し、マッピングするのです。

その上で、各種施策のマイルストーンをスケジュールへと落とし込み、それぞれ測定可能なゴール設定します。各施策の最終ゴールの前に、実施中のパフォーマンスを測るパフォーマンス指標を設けることで、実施途中でのコントロールを可能にするケースもあります(特に数値の測定がリアルタイムに行いやすい、Web系の施策の場合)。

Twitterを使うか、iPhoneユーザー向けに何か仕掛けをするか、といった手法の選択は、あくまでこうしたマーケティング上の課題を、ターゲット別にきちんと落とし込んで、誰に何を伝えていくかが整理された上ではじめて決定されるべきことではないかと思います。

マーケティングは「売れる仕組みづくり」だと言われます。
仕組み=システムを欠いた、行き当たりばったりの施策の繰り返しでは、売れる状態をつくりだすのはむずかしいのではないでしょうか?

iPhoneユーザーってどんな人?

月曜日, 2月 15th, 2010

商品を企画・デザインするにしても、マーケティングコミュニケーションのアプローチを考えるにしても、ターゲットとする実際の人びとを把握しなければコンセプトは定まりません。
人間中心のデザイン」というアプローチでは、ラピッド・エスノグラフィなどの調査方法を用いて、実際にターゲットとなる人びとが暮らす現場で観察&インタビューを行いながら、ターゲットの潜在的要求、インサイトを発見することからデザインをはじめますが、いつでもこのアプローチができるとは限りません。

エスノグラフィのようなアプローチがとれないとき、私は、ある商品ブランドのユーザーがどんな人をざっくりと知るのに、3万人の持ち物調査を行ったデータベースサービス「ブランドデータバンク」を使っています。3万人の持ち物データから調べたいブランドの所有者を検索して、その人たちが他に所有している商品の傾向から、その人の好みや価値観の傾向を類推するのです。

iPhoneユーザーってどんな人?

例えば、ここ最近、一気に見かけることが多くなったiPhoneユーザー。
このiPhoneユーザーってどんな人?と思ったときにも、このデータベースが使えます。

実際調べてみると、iPhoneを持っていると答えた人が、前回調査(2009年6月)から今回調査(2009年12月)で、約2.3倍に増えています。
この数字だけみても、街で持っている人を見かけることが多くなったと感じるのが単なる気のせいではないのだなと思います。

iPhoneユーザーの持ち物やサービス利用の傾向を知りたい場合は、iPhoneを持っている人と3万人全体を比較します。2つの異なるセグメントのユーザーを比較して、両者で異なる傾向を示す持ち物にはどんなものがあるかを調べるのです。

例えば、わかりやすいところでは、iPhoneを持っている人は全体と比べてgoogle利用率が2倍です。
さらにこれも納得ですが、Twitterに関してはiPhoneを持っている人が全体と比較して8倍弱も利用率が高いという傾向があります。

プロダクトで見ると、デジタルカメラは、ニコンのDシリーズを持っている人が全体の約2.7倍いて、母数は少ないものの、リコーGRシリーズを持っている人が約5.5倍います。
ゲーム機を見ると、ニンテンドーDSやDS Liteは全体と比較しても1.2〜1.3倍とほとんど差はありませんが、ソニーのPSPやPS3の所持者は多い(それぞれ1.94倍、2.37倍)という傾向が見られます。

ほかにも、好きなアニメ・マンガに「ガンダムシリーズ」、「エヴァンゲリオン」をあげる人も2.3倍程度あったり、おもしろいところでは好きなステーショナリーメーカー・ブランドとして、±0を挙げる人が3.5倍程度いたり、よく利用する雑貨・インテリア・ファッションショップとしてIKEAを挙げる人が2倍程度いることなど、なんとなくiPhoneを持っている人のイメージが浮かび上がってくるのではないでしょうか?

ポール・スミスの服を着て、レッドウィングのブーツを履く?

服でポール・スミスが約2.5倍、靴を見るとレッドウィングが約4倍というのを見ると、いったい、どんな組み合わせやねんとも感じます。
ただ、同時に、価値観に関する設問をみると「新商品が出ると情報をチェックせずにはいられない」「次から次へと欲しいものが出てきて困る」と答える人が全体と比べて、それぞれ10%以上多いこともあわせて考えると、かっこいい、クールと思えるものは積極的に自分の生活に取り入れていく人なのかなとも思います。
そう捉えると、ポール・スミスとレッドウィングがいっしょに挙ってきてもおかしくはないのかな、と。

と、このデータをざっと見た限りでは、だいぶ一般に浸透してきた印象があるとはいえ、まだiPhoneユーザーというのは傾向としては、新しいもの好きの男性が多く所有している傾向があるようです。

これが次の半年後にどれだけ一般的な傾向に近づいてくるか?
いまから楽しみです。

※ブランドデータバンクは、ブランドデータバンク株式会社の登録商標です。