デザイン思考ワークショップ開催。参加者を募集します。

7月 29th, 2010

8月20日(金)に、弊社にて「デザイン思考ワークショップ」開催します。

ペルソナやシナリオ、プロトタイピングなどの手法を用いて、ユーザー体験をデザインするアプローチを学んでいただくワークショップです。

今回は、ウェブデザイナー/開発者、各種ユーザーインターフェイスのデザイナー/開発者、ネットサービスの企画者様などを対象に、20名まで参加者を募集します。
参加費はお一人様30,000円となっています。

講師は私・棚橋が担当。
参加者はチームに分かれて、こちらから提供するユーザーのデータに基づき、デザイン思考の手法を用いて、ユーザーの期待に応えるためのウェブサービスを企画、デザインしていただきます。

これまで何度か、同様のワークショップを開催させていただいていますが、参加者の方からは、

  • 本を読んだだけでは、わからなかったデザイン思考での企画/デザインの方法がよくわかった
  • すごく楽しかった。ペルソナには興味があったけど、どう落とし込むのか分からなかったのですが、今回のワークショップでようやく分かった
  • 現在私が行っているWebサイトは本当に会社都合で作っているので、ユーザーに向けてのサイト作りにペルソナ手法を活用したい

といった感想をいただいております。

私自身、このデザイン思考の手法というのは、口だけで説明するのが非常にむずかしく、実際に体験していただくことで他の手法と何が違うかを感じてもらうしかないと思っています。
ぜひ、この機会にペルソナやシナリオを使った、人間中心のデザインとはどういうものかを体験いただき、日々の仕事に活用いただけるよう手法を学んでいただければと思います。

詳細は、以下のページに開催概要、申し込み方法などの記載がありますので、興味のある方はぜひご参照のうえ、ふるってご応募ください。

デザイン思考ワークショップ開催 【参加者募集のお知らせ】

よろしくお願いいたします。

Twitter運用のための企業ペルソナ作成サービス

7月 2nd, 2010

会社のホームページの方にもリリースが掲載されていますが、Twitterをマーケティングやブランディングに活用したい企業を支援するための企業ペルソナ作成サービスを、今秋からスタートさせようと計画中です。

コプロシステム・プレスリリース
「マーケティング・広報担当者向け『Twitter 企業ペルソナ研究会』を開始
~今秋からの本格サービス提供開始を視野に~」

http://www.coprosystem.co.jp/news/release_100702a.html

担当者の負荷がTwitter導入のネック

そもそも、このサービスを企画したのは、Twitterの活用を検討しているクライアント様から、「うちもやりたいんだけど、担当者の負荷を考えると、なかなか踏み切れない」などの相談を受けることがあったからです。

また、日経BP社・日経ネットマーケティングによる、企業の人気Twitterアカウントの担当者を対象とした「企業のTwitter活用実態調査」でも、以下のような結果が出ています

フォロワー数を多く集めるTwitterアカウントを運営している企業でも課題がある(複数回答)。最も多かったのが、「効果の測定が難しい」の51.9%。次いで、「担当できる人材が限られる」(45.6%)、「担当者の負荷が大きい」(40.5%)となった。

人気アカウントにも効果の測定と人材に悩み:NETMarketing Online

この「担当できる人材が限られる」「担当者の負荷が大きい」といった企業の課題を解決するためのサービスが、今回リリースした「Twitter 企業ペルソナ」作成サービスです。

企業のアイデンティティを表現するペルソナを設定

このサービスでは、個々の担当者の負荷を減らすために、複数の担当者が協力しあいながらも、Twitter上では同一のキャラクターとしてつぶやけるよう、企業アカウントの人物像をモデル化した企業ペルソナを設計します。

イメージとしては、こんな具合にペルソナを設定します。

これはある飲料メーカーの企業ペルソナを作るという想定で作成した資料の一部ですが、このような形で、企業で運営するTwitterアカウントの性格や趣味、普段の過ごし方などを規定していくのです。

もちろん、思いつきで人物像を作り上げるのではなく、ブランドという観点から適切な調査を行い、そのデータを元に、ブランドが表現すべきアイデンティティがどういうものかを明確にした上で、それをペルソナという仮想の人物モデルに組み立てるのです。

これまでの商品開発コンサルティングを通じて培ったブランディングのノウハウと、人間中心のデザインのペルソナ作成のノウハウの融合が今回のサービスの核となっています。

ガイドラインの作成や担当者教育で「それから」もフォロー

ペルソナを作っただけでは、当然、「ペルソナ作って、それからどうするの?」となってしまいがちです。

ただ、このサービスはペルソナを作って終わりではありません。
ペルソナを企業のマーケティングやブランディングにいかに活用できるよう、支援していくかが、このサービスの提供目的ですので、ペルソナ作成後のフォローもしっかりサービスに盛り込んでいます。

リリース文のほうにもワークフローを掲載して説明しているとおり、作成したペルソナをベースにした具体的な「Twitter運用ガイドラインの作成」やそれに基づくワークショップ形式での「担当者教育」「運用支援」なども視野に入れています。

Twitter 企業ペルソナ研究会

さて、本格サービスは先に書いたとおり、今秋の提供開始を計画しておりますが、それに先立ち、7月後半から『Twitter 企業ペルソナ研究会』を実施することになっています。

自社のマーケティング活動や商品開発などにTwitterの活用を検討されている企業の皆様を対象に、全4回の予定。参加費用は無料。募集人数は、10社程度で各社2名までの参加で20人程度を予定しております。

詳しくは、こちらのページをご覧いただければ、と思います。

というわけで、久々の更新がまたまた告知ですみません。

ちなみに、このブログの公式Twitterアカウントもありますが、そちらはペルソナではなく、棚橋本人ですので、キャラ設定が非常にブレております 笑 そちらの方もよろしくお願いいたします。

道具のデザインから、スタイルの提案へ

6月 1st, 2010

人びとに求められるものをどう生み出していくかを考えていく上で、商品を単体で捉えるのか、あるいは、その商品が使われるライフスタイル全体を対象として捉えるのかでは、大きな違いがあります。

個々の物をどうデザインするかという視点がある一方で、それらを組み合わせた場のしつらえをどうするかという視点がもう一方にはある。

例えば、茶の湯においては、道具や花、書を用いた茶室のしつらえがその見立てを通じて和歌や漢詩の情景を想起させながら、そこに茶の作法が結びついて一座建立の遊びの場が創造されます。

これは茶の湯という特別な場を想起せずとも、私たちの日常生活に目を向けても同様です。

料理などはその典型でしょう。
料理をする際はガスコンロならガスコンロにだけ向かい合っているということはありえず、常にコンロの上におく鍋やフライパンとも、同じ並びにあるシンクや作業台とも、はたまた、道具や調味料が入った物入れや食材の入った冷蔵庫との関係性において、料理という一連の作業が行われます。

人びとの日々の暮らしは、個別の商品と1対1で向かい合っているというよりも、複数の物や人が存在する空間に囲まれているという方がより現実に近い。
それは日常の風景を写真に撮ってみれば明らかになることで、生活の現場の写真はショールームや広告イメージのようにはならず、1つの商品のまわりに他のさまざまな商品が雑多に写りこんでいるはずです。

こうした連続的な作業を成り立たせるためには、道具主義的に個別商品のデザインをするだけでなく、作法などのソフトウェアもふくめたスタイル提案が欲しいところです。

使う人を含めてはじめてシステムと呼べる

キッチンの例で話を続けますと、いまのキッチンはシステムキッチンが主流です。
でも、その場合の「システム」とは何でしょう?

山口昌伴さんという方が書いている『台所空間学』という本に、こんな一節があります。

西欧では、調理道具を飼いならすことが躾の重要なポイントであった。銀器・銅器・錫器などの金属器を磨きあげ使いこんで代々の家宝として伝えた。調理と道具の間に密接な関係がマニュアル化されており、永年のマニュアル運用から、何がどこにあるか、ということが身に備わっているのである。空間の秩序を守るためには、行動の作法が確立されねばならなかったのである。それは茶道の修養を想起すればわかろう。一服の茶を喫するにも、修練を積んだ作法がなけば道具は叛乱を起こす。
− 山口昌伴『台所空間学』

山口さんは、同著のなかで、こうした「作法」を身につけ、それを躾によって代々伝達する文化をもった西洋でこそ、システムキッチンがシステムとして機能することを指摘しています。
一方で、そうした「作法」のないまま、個々の道具の寄せ集めとしてシステムキッチンなる家具を導入してしまった日本の近代の台所の問題を提起しています。

システムはそれを人が使ってはじめてシステムと呼ぶことができます。
人が使わなければシステムとして機能しませんし、使ってくれる場合でもその人の行動が余計に混乱するようではシステムではないでしょう。

日本の台所の話でいえば、ピカピカときれいなシステムキッチンは、煙をモクモクとさせながら七輪でサンマを焼くことにも、泥だらけの野菜を調理することにも、親戚一同を集まるお祝いの料理を複数の女性が共同で行うのにも向かず、むしろ、かつてのシステマティックに作られていた土間、かまど、いろりといった台所のシステムを崩壊させてしまっています。

Twitterが生み出したスタイル=作法

使う人がそれをどう使うかも含めてシステムであるという場合には、ハードウェアやソフトウェアといった物的な面で狭義のシステムを設計すればよいだけでなく、同時にそれを使って行う作業の作法やその作法の伝達も同時に考慮しないといけないということです。

例えば、Twitterにしても、単純に140文字のTweetができる仕組みだけではサービスとして成立せず、実際にそれを使うユーザーがつぶやくための作法が確立してきたからこそ、今のような盛り上がりを見せているといえるはずです。
この点で、Twitterというサービスのデザイン(サードパーティーの提供する様々なサービスも含めて)は、ユーザーの間で自然に作法ができあがってくるのを促すことにある程度は成功したと言えます。
特に日本では、iPhoneでTwitterを使うというスタイル=作法が確立されたのが、この盛り上がりのポイントでしょう。

ただし、一方でその作法の伝達が行われず、いまだに「何をつぶやけばいいのかわからない」と感じている人が、利用に踏み込めないケースも少なくないのも事実で、ここに課題を残しているのも確かです。

形式知化が可能な作法と、暗黙知にとどまる作法

商品やサービスが人びとに使われることを望むなら、こうした作法=スタイルが自然に生まれてくるような市場環境を設計・準備することが今後ますます必要になってくるのではないかと思います。

単純にひとつの商品の形状や機能をデザインするだけでは足りず、それが使われる際のスタイルがユーザーの間で自然と生まれてくるために必要な条件をクリアしておかなくてはいけません。

その際、考慮すべきことは、作法=スタイルには、形式知化が可能なものと、そうではなく暗黙知にとどまり続けるものがあるということでしょう。つまり、言葉や視覚的なイメージを使って意図的に伝えることができる作法=スタイルと、より体験的に実際に使ってもらうなかでユーザー自身に気づいてもらうしかない作法=スタイルがあるということです。

先のTwitterの例でいえば、@やRTの使い方は言葉で教えることができても、そもそも何がおもしろいのかは使ったことがない人にはなかなか教えられない部分があります。
ここにTwitterを楽しむための暗黙知的な作法=スタイルが含まれるはずですが、それは「とりあえず使ってみて」といい、相手が実際に使って楽しみを感じてもらうことでしか伝わらないものです。

ソーシャルメディア/ソーシャル消費の時代のデザイン

ただし、商品やサービスをデザインする場合は、この形式知化できない暗黙知的な作法=スタイルも考慮する必要がある。そこにしっかり目を向けて、自然と使い方、ノウハウがユーザーの間で生まれてくるためには、何が必要なのかということを考慮して、商品やサービスを設計するのとそうでないのとでは雲泥の差が生じるはずです。

ある意味では、そうした面にいかに目を向けた設計ができるかどうかが、このソーシャルメディアの時代、ソーシャル消費の時代のデザインの課題ではないでしょうか。

W型問題解決モデル

5月 28th, 2010

KJ法の生みの親である、故・川喜田二郎さんの著書『発想法―創造性開発のために』は、人間中心のデザインを商品開発に取り入れようと考える方にとっては必読書です。

質的研究のベーシックな技法としてのKJ法がコンパクトに紹介されているというだけでなく、その背後にある発想する際の心の動き−アブダクション−を的確に捉えていて、KJ法を使わない場合であっても、発想、創造はどのように行えばよいかのヒントが隠されているからです。
私が著書『ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術』で、川喜田さんの本を紹介しながらデザイン思考の方法論として展開させたのもそれが理由です。

W型問題解決モデル

さて、その『発想法―創造性開発のために』のなかで川喜田さんは、W型問題解決モデルというものを提唱しています。科学的発想のプロセスをモデル化したもので、次のようにW字型に図示できるので、そう呼ばれます。

発想のプロセスは、最初の「問題提起」からはじまり、右へと流れていきます。その際、上下に「思考レベル」と「経験レベル」の2つのレベルがあり、作業プロセスはこの間を行き来することになります。

書斎や研究室などの内部での「問題提起」から、内部から対象が存在する外部を想像しながら行う「探検」を経て、実際の現場での「観察」に移ります。これは人間中心のデザインでいえば、コンテキスチュアル・インクワイアリー(文脈的質問法)などの調査にあたります。
その次の「発想」の段階はまさにKJ法の出番。「観察」で得たデータを元に分析を行い、発想を生みだす段階です。人間中心のデザインでは他にワークモデル分析などを併用します。

この「発想」の段階を経て、再び、思考レベルに戻って「推論」を行います。仮説を組み立てる段階です。人間中心のデザインであれば、コンセプトを生みだす段階です。ペルソナシナリオなどもコンセプトづくりのための手法です。

次に、科学の分野であれば「推論」により作成した仮説を検証する「実験計画」を立てますし、人間中心のデザインであれば、コンセプトを具体化するプロトタイピングを重ねます。その段階を経て再び「経験レベル」に移動し、「実験の実施」や、人間中心のデザインであればユーザーテストを行います。その実験/テストによって仮説やプロトタイプが「検証」され、問題点などが明らかになる。

以上がごく大ざっぱなW型問題解決モデルの概観です。

日常語を非日常化して問いを立てる

さて、このW型問題解決モデルのポイントは以下の2つです。

  • 日常語を非日常化して問いを立てる
  • 思考レベルと経験レベルの両方で発想のための素材を集める

1つ目の「日常語を非日常化して問いを立てる」に関しては、先ほど、すこしTwitterのほうでもつぶやいておきました。イノベーションへと通じる発想を生みだすためには、何よりまず問いを立ててみることが大事だ、と。問いから思考がスタートすることで、思わぬ収穫に出くわします。

その際、工夫すべきは問いの立て方です。
わからないことを問うのは誰でもできます。ただし、その問いからは新しい発想は生まれにくい。工夫が必要なのは、わかっていることを問いに変換することが求められるからです。イノベーションにつながる発想にとって有益な問いは日常語を非日常化するような問いです。

当たり前だと思って見過ごしていることを検討の俎上にのせるような大胆な問いこそがイノベーションへの道を開きます。「問題提起」の段階がいかに大事かということです。

思考レベルと経験レベルの両方で発想のための素材を集める

次に2つ目のポイントである「思考レベルと経験レベルの両方で発想のための素材を集める」は、まさにそのことに関係しています。

日常を非日常化するような問いを発するためには、まずその問いを成り立たせるための日常をさまざまな角度から詳細に眺めて得た情報が必要です。それは経験レベルで行う観察の結果だけが大事なのではなく、書物などの資料から得られる情報も同時に大事だということです。

どうもデザイン思考だとか、人間中心のデザインだとかいうと、エスノグラフィだのフィールドワークだの、観察による情報収集ばかりが取りざたされる傾向がありますが、大事なのは現場でのデータだけではありません。日常を非日常化する問いを立てるためには、現場という日常から得られる以外のオルタナティブな面も見ておく必要がある。すでに観察不可能な過去の情報や、現実をまったく違った目から眺める様々な人の見方を知っておく必要がある。この思考レベルと経験レベルのバランス、行き来こそが発想を生みだすきっかけを与えてくれるのです。

本日はiPadが日本でも発売されました。
あらためて実物をみると、これからいろんなことが起こりそうだと感じます。iPadでいろんなことが変わるとき、自分たちはどう変わるか。何をどう変えるか。それを考え、イノベーションを生みだすためにも、どのような問いを立てられるかが大事なのではないでしょうか。

Twitterはじめるとどうなるの? その1

5月 24th, 2010

さて、先週の木曜日にはじめた、当ブログの公式Twitterアカウント。

http://twitter.com/sijyo_no_oteire

今日で5日目を迎えたわけですが、その間、97ツイート。まだ正味4日しか経過してないと思うので、1日平均24ー5ツイートくらいのペースでしょうか。

「市場のお手入れ」公式Twitterアカウントをはじめました。」を書いた時点では、当然、フォローも。フォロワーも0だったわけですが、それがこの4日間で、

  • フォロー:63
  • フォロワー:77

と、すこしずつですが、増えています。
フォローしてくださった皆さん、ありがとうございます。

それから、このアクセス数のすくない弱小ブログへの訪問者も、セッション、ページビューとも増えています。
下は、ページビューのグラフですが、木曜日、金曜日と上昇トレンドです。

金曜日のページビューは、プレスリリースがあってCNET Japanなどにニュース記事が載った日とおなじくらいの数値になってます。
ざっくり言うと、Webメディアにニュース記事が載るのに匹敵する効果はTwitterにはゆうにあるというわけですね。あっ、もちろん、それはこの程度の知名度だからとか、いろんな環境条件があってのことですが。

まぁ、伸びているといっても、僕が個人的にやっている例のブログに比べてしまうと、10分の1にも満たないわけですが、がんばっていこうと思いました。

Twitter公式アカウントをはじめて、まだ5日目ですが、こうやって動きがあると面白いですね。
すでにいろんな方々に無差別に絡ませていただいておりますが、あたたかくお付き合いいただけると幸い。

公式アカウントはこちら > http://twitter.com/sijyo_no_oteire

では、今後とも、よろしくお願いいたします。

リフレーミング

5月 20th, 2010

さて、あまり告知ばかり続いてもアレですので、ちゃんとしたブログの記事も書いてみようか、と。

今日はリフレーミングという発想法について。
このリフレーミングもデザインの現場では昔から使われている発想法です。
まあ、特に方法というまでのものでもないのですが、とにかく既存にあるものの見方を変えてみることで新たなアイデアを生みだすというのがリフレーミングです。

例えば、

  • 小さいものは大きく、大きいものは小さくサイズを変えてみる。
  • 素材や中身を入れ替えてみる。
  • いつもと順番を逆転してみる。
  • 異質なモノ同士を並べてみて、その2つが融合した形を想像する。
  • 異分野のやり方を取り入れてみる。

など。

そんな風に、普段当たり前だと思い込んでしまっているものを別の視点から見てみることで、意図的に新鮮な見え方を見つけ出す。ものの見方や捉え方の枠組みを変えてみることで新しい発想を生みだそうというのがリフレーミングです。

今日、話題になっているGoogle Font APIも、これまでローカルPCに依存していたフォントをサーバー側のものを利用する形にクラウド化する−置き場所を今までと変える−という意味でリフレーミングの一例でしょう。

面白いアイデアにつながるフレーム変更はむずかしい

こう書くと、なんだ簡単だと思うかもしれませんが、意外とやってみると大変です。

いや、ありきたりなフレーム変更ならいくらでも思いつくのですが、フレームを変えて面白いアイデアが出てくるかというとそれは別。パッと思いつくようなフレームの変更から出てくるアイデアはやっぱり陳腐です。

そのくらい人間の思い込みというのは案外強力なのでしょう。
フレームを変えているつもりでも、意外と元のフレームに引きずられてしまうのだと思います。
何か商品のアイデアを出すためにフレーミングしているのだとしたら、その商品の根幹から覆すようなリフレーミングをするには、どういう視点から枠組みを変えればいいか。その視点自体がなかなか見つからないものです。
発想する人自身の固定観念が無意識のうちに「それは無理」と決め込んで、フレーム変更の対象から除外してしまっているのでしょう。

リフレーミングの3つのポイント

反対に、面白いアイデアの発想につながるフレームの変更というのは、そんなところ変えられるの? とか、それとそれを組み合わせるの? と、なかなか気づかないところだったりすることが多い。

では、どうすればいいかというと、これは量を追求するしかない。
簡単に思いつくアイデアが在り来たりだとしたら、思わぬ発想というのは実は行き詰まったときに突然浮かび上がってきたりします。とにかく質ではなく、まずは量を追求してみる。
これが1つ目のポイント。

2つ目のポイントは、一人でアイデア出しをするよりは、複数人でブレインストーミングをするなどの方法を取り入れることです。一人で考えていると固定観念にはまってしまって、そこから抜け出せなくことが多いのですが、ブレインストーミングなら他の人の出したアイデアが見方を変えるきっかけにもなります。逆にいうと、ブレインストーミングでなかなかアイデアがでない時は、このリフレーミングのやり方を取り入れるといいでしょう。

そして、3つ目のポイント。
それは具体的なモノを見たり触ったりしながらだったり、あるいは、ボディーストーミングと呼ばれる手法のように、あたかも新しいアイデアを具現化した商品が目の前にあるかのように身体を使ってシミュレーションしてみるようなやり方をしてみることです。
これはようするに、言葉以外の記憶を呼び覚まして、発想を誘発するということです。言葉だけで考えていては気づかないことも、身体が無意識のうちに覚えている記憶を刺激して呼び覚ますことで、違う発想が生まれてくることもあります。
例えば、何かを大きくするという場合でも、実際にささっとプロトタイプを作ってみるとか、手や身体を使って、その大きさやそれを使う時の姿勢などを表現してみると、言葉だけで考えていたのでは気づかないことが見えてきたりもします。

リフレーミングの効用

発想というのはゼロから生まれることはほとんどなくて、基本的には既存のアイデアの組み替え、バリエーションだったりします。「そんなの無理」と自分の発想に蓋をしてしまうから、新しいアイデアが生まれてこないだけで、実はアイデアの元はそこら中に転がっています。

先日、弊社の広報をお手伝いいただいている方もおっしゃってました。
ニュースのネタを作る1つのコツは「狭い範囲に絞る」ことだと。
教えてもらった例をそのまま書けば「ショッピングの分野で」「女性が活躍する分野で」ではなくて「インテリアのオンラインショッピング分野で」「働くバツイチシングルの女性にとって」と領域を絞ることで、その分野でのナンバーワンにもなれるし、自身の特色も表現しやすくなります。
これも1つのリフレーミングです。

そして、何よりのリフレーミングは、ピンチをチャンスに変えること。よくピンチはチャンスだといいますが、自社にとっての脅威や弱みを見方を変えることで、機会や強みに変える。これこそがリフレーミングの最大の効用でしょう。

というわけでネタがないからブログ書けない、Twitter始めたからブログを書く暇がないと流れがちな想いをリフレーミングして書いてみました。

「市場のお手入れ」公式Twitterアカウントをはじめました。

5月 20th, 2010

このブログの更新もままならない状態も続いていますが、懲りずに「市場のお手入れ」公式Twitterアカウントをはじめました。

こちらです。

「市場のお手入れ」公式Twitterアカウント

ブログに書く以前のちょっとしたアイデアや、デザイン思考や人間中心のデザインなどに関連した情報を、随時つぶやいていきたいと思います。
まさについ先ほどはじめたばかりなので、つぶやきの数も6つだけ。
フォローしてる人も、してくれる人もいない淋しい状態ですので、Twitterを利用している方は、ぜひフォローしてください。

前回に続いて告知のエントリーになってしまいましたが、よろしくお願いいたします。

講演「Human Centered Designのネクストステップ」

5月 17th, 2010

GW前から更新が滞っています。
そして、いきなりの更新の再開が告知で申し訳ありません。

2010年6月9日 (水) – 11日 (金)の日程で行われる、ソフトウェア・シンポジウム 2010 「ソフトウェア・エンジニアリングの変容と再生」でお話しさせていただくことになりました。
このソフトウェア・シンポジウムというイベント。私は今回お声がけいただくまで知りませんでしたが、30年以上続いているものだそうです。ソフトウェアというと歴史の浅いものだと感じてましたが、それでも、こうしたイベントが30年を超える程度には歴史の積み重ねがされてきたんですね。

そして、その「変容と再生」が今回のテーマという。
そこで私が話をするテーマは「Human Centered Designのネクストステップ」。
こちらも「変容と再生」にあわせて、現在主流のHuman Centered Designの問題点を明らかにしつつ、次のステップとしてどう変化すべきかという点を、ソフトウェアの観点を中心にお話しようと思っております。

Human Centered Designのデザインプロセスが、インタラクティブシステムを対象に国際規格化されたのが1999年。今年で11年目を迎える。そのユーザー中心のデザイン思考は、AppleやIDEOなどの先進的な企業で用いられ、数々のイノベーションを実現させている一方で、その機能重視、体験重視のアプローチには批判も出てきている。とりわけ何を機能化し、何を個人としての人間や集団としての人間のスキルや文化として残すのかという長期的なスパンでヴィジョンを描いた上でデザインしているかどうかが問われはじめている。
こうした長期的なヴィジョンをもつことが求められるHuman Centered Designのネクストステップは、ソフトウェア開発にも影響を与えるだろう。何をソフトウェア化し、何を人そのものがもつ文化やスキルとして維持するのか。今回は、人間の生活、社会における文化という側面からソフトウェアというものを考え直してみたい。

お話しする日時は、11日(金)の11:15 – 12:15となっております。
ご興味のある方はぜひご参加ください。会場でお会いしましょう。

その他のプログラムに関してはこちらを参照ください。
なお、ソフトウェア・シンポジウムへの参加費用などはこちらのページでご確認いただければと思います。

以上。告知でした。
よろしくお願いいたします。

身体姿勢とユーザーインターフェイス

4月 23rd, 2010

アメリカではiPadが発売されて話題になっていますが、それも含めてユーザーインターフェイス(以下、UI)が多様化する勢いが増してきているという印象です。そうした流れの中、UIとそれを用いる際の身体姿勢との関係について考えていく必要も増えているのではないかと思っています。

ここで言っているUIは、単にGUIの画面のなかの話ではなく、 これまでの一般的なPCのGUIであればディスプレイ+キーボード+マウスが一体となったハードウェアも含めたものを指しますし、iPhone、iPadであればタッチ操作が可能なハードウェアを含めた、ユーザーとコンピューターのインターフェイス全体を指します。

著名なインタラクションデザイナーであるアラン・クーパーは著書『About Face 3 インタラクションデザインの極意』のなかで、

システムのハードウェア要素とソフトウェア要素(およびそれらの間のインタラクション)を同時にデザインすることが大切だ。そして、そのときにゴールダイレクテッド、人間工学の観点と美的観点を忘れてはならない。
アラン・クーパー『About Face 3』

と書いていますが、まさにハードウェアとソフトウェアとを統合した形でユーザーエクスペリエンスをデザインする必要性が、UIの可能性が技術的に多様になった今だからこそますます重要になってきています。

そのUIを考える際に、クーパーがいうように「人間工学の観点と美的観点」を忘れないためにも、それを用いる際のユーザーの身体姿勢をあらためて考慮に入れて設計したほうがよいと感じています。

身体姿勢と利用のオケージョン

身体姿勢は、まず大きくは、立った状態、座った状態、寝ている状態と分けることができます。

しかし、さらに詳細に分ければ、

立った状態
静止している、歩いている、混雑した場所で立っている、など
座った状態
デスクに向かって椅子に座っている、ローテーブルを前にソファーに座っている、公園などの屋外のベンチに座っている、床に座っている、ベッドの上に脚を伸ばして座っている、など
寝ている状態
仰向けに寝ている、うつぶせで寝ている、身体を横にして寝ながら時々方向を変える、など

といった様々な状態をイメージすることができます。

そして、これらの身体姿勢は、それぞれ会社で仕事をしているとか、移動中に歩いているとか電車に乗っているとか、交差点で信号待ちをしているとか、家や飲食店で食事をしているとか、家でぼーっとくつろいでいるとか、寝る前の時間をベッドの上で過ごしているとか、様々なオケージョンに紐づいています。

利用のオケージョンとUIのデザイン

こうした身体姿勢が多様化してきたUIのデザインと深い関係にあると思うのです。

例えば、コンピュータといえばデスクトップが主流であった頃であれば、文字通り、その利用にはデスクが必要でした。一般的なオフィスでの利用のように、椅子に座った状態でちょうどよい高さのデスクの上で使うというのが利用時の基本となる身体姿勢だったはずです。
家庭で床座で使うような場合でも、床に座った状態の高さでちょうどよいテーブルが利用の必須条件だったでしょう。

それがノートパソコンが主流になってくると、パソコンはデスクの上やテーブルの上に必ずしも固定しておく必要はなくなりました。

床にうつぶせで寝転がった状態で使うこともできますし、ソファーに深く腰掛けた状態で脚の上にのせて使うこともできます(長時間使っていると脚が熱くなりますが)。
その場合でもGUIのデザインから来る制約から、適切な画面との距離、適切なキーボードやマウス(またはタッチパッドなど)が決まったはずです。持ち運びが可能になったとはいえ、デスクやテーブルとは限らないまでも、床や脚の上などを含め、利用するための置き場所は必須でした。

日本人の生活スタイルにおける身体姿勢

携帯電話というUIは、そうした置き場所に縛られた利用の制約を取り除き、立った状態でも利用ができるよう、利用可能な身体姿勢とオケージョンの幅を広げました。
歩きながらでも使えますし、混雑した電車のなかで片手でメールをすることもできる。先に列挙したほとんどの身体姿勢で利用できるのが従来の携帯電話のUIだったのではないかと思います。

特に、椅子の生活の割合が増えたとはいえ、まだまだ床座や床やベッドに寝転がった状態でリラックスをする日本人の生活に、その片手におさまり天地や縦横がどのような状態でも使えるUIは、非常にマッチしていたのではないかと思います。

ところがiPhoneが登場して、利用可能な身体姿勢のバリエーションという点では、すこし後戻りがみられました。よく言われるように、文字入力が片手で行いにくいことや、寝転んだ状態の天地や縦横が決まらない状態での操作がむずかしいことなど、携帯電話のUIで可能だったことができなくなってしまいました。

iPadはどうでしょう? まだどういう問題が実際に出てくるかはわかりませんが、例えば、先のノートパソコンの例にあった脚の上にのせて操作するということはできなくなるのではないでしょうか。キーボード付きのドックが用意されていますが、脚の上にのせて安定するかは疑問です。
うつぶせの状態でもどうなのでしょうか。キーボード付きのドックなしの状態で使う場合は常に手で支えている必要があるでしょうから、長時間の利用にも向いていないのは確かでしょう。

いまだに床座や、床やベッドに寝転がった姿勢で過ごすことの多い日本人のライフスタイルを考えると、必ずしも適切なUIデザインではないかもしれません。

操作という小さな作業をするときの身体姿勢とデザイン

こんなことを書くのは別にiPhoneやiPadの問題を指摘したいからではありません。操作をする際の身体姿勢とUIのデザインの関係について示してみたかったからです。
ごく小さな動作だとはいえ、機器を操作するというのもやはり作業です。作業と身体姿勢の関係はデザインを考える上では切っても切れない深いつながりがあることにもう一度焦点を当ててみたかったからです。

いわゆるGUIの話とは別ですが、食事をする際のインターフェイスである、食器や箸、フォーク&ナイフ、テーブルや椅子の高さなどの組み合わせも、それぞれの国の文化における身体姿勢によって異なるということを考えてみてもおもしろいでしょう。

西洋ではフォークとナイフで食事をするために食器を手で持ち上げることはありませんが、箸を使う日本では食器を手にもって食べます。手に持ちやすいよう、茶碗や汁器などは手のひらになじむ丸みを帯びた形、大きさになっている。同じ箸を使う東洋のなかでも、テーブルに肘をついて食べる中国と、肘をつかない日本では、テーブルの卓面と椅子の座面の高さの関係が異なります。同じ日本でも立ち食い蕎麦屋などで立って食べるときはある程度テーブルの高さがあったほうが食べやすい。

食事をするという行為における身体姿勢と、その行為を可能にするインターフェイス=道具のデザインもこのように密接に結びついています。

日本のライフスタイルに合ったUIのデザイン

今後、ますますUIデザインの自由度が増える状況では、同じように、こうした人間の身体姿勢とその姿勢をとる際のオケージョン、心理状態をきちんと考慮した上で、デザインする必要が増してくるのではないかと思います。

このあたりを考えていく上で前回「シナリオを使ったデザイン」で紹介したような、ユーザーの利用シーンをどんな環境でどのような操作を行うかも具体的にイメージしながらデザインする手法が有効になるでしょう。

特にいまだ西洋とは異なるライフスタイルをもつ日本文化に合ったUIデザインの提案というのは、日本のなかでこそ生まれてこないといけないのではないかと思います。

関連情報

関連エントリー

シナリオを使ったデザイン

4月 13th, 2010

前回の「ペルソナ(ユーザーモデル)を作る」では、商品/サービスを用いるターゲットユーザーの人物像を明示する手法としてのペルソナを紹介しました。

ペルソナは商品/サービスを利用する人間の側を描いたモデルです。次の作業としては、そのペルソナが実際に利用する側の商品/サービスのモデルを考えることが必要になります。

つまり、商品/サービスのコンセプトメイクをします。
その方法のひとつが、今回紹介するシナリオを使ったデザイン(シナリオ・デザイン)です。

ペルソナにとって理想の商品をシナリオとして描く

シナリオを使ったデザインでは、ペルソナが商品/サービスを利用する際のスタートからゴールに至るまでの一連の流れ(ペルソナがいつどんな場所で何を目的として、どのように商品/サービスを操作、利用するのか)を、物語風の文章として描きだします。

その物語のなかでペルソナは、自身の抱えていた問題をいまはまだない理想の商品/サービスによってスムーズに解決します。物語には、ペルソナがどんな風に商品/サービスを操作するのか、使った感じからどんな感情を抱くのかが描かれますが、その経験はすべて快適で、ペルソナにとって好ましいものです。

つまり、ここで描かれるシナリオは、ペルソナにとって理想の状態を描いたものです。
その理想の状態を実現するには、ペルソナは商品/サービスをどのように操作するのが理想なのか、その操作に対して商品/サービスはどのようなフィードバックを返すのが理想なのかを、物語の動きのなかで記述するのです。

動きのなかで記述することで、実際の操作イメージ、利用イメージを思い浮かべながら、商品やサービスのモデルを考えることが大切です。
機能は搭載されていても実際には使えない/使われない商品は世の中には少なくありませんが、それは実際にユーザーが機能を使う際の動きをイメージしないまま、メニューの設計や操作方法の設計をしてしまっているからです。

シナリオを使ったデザインの一番の利点は、実際にユーザーが商品を操作する際の動きをイメージしながら機能のデザインをすることで、使えない/使われない機能を作ってしまうという失敗がないようにすることです。シナリオのなかで、ユーザーの体験そのものを描くことで「この形ではユーザーはこの機能を使えないだろう」ということをあらかじめ理解しやすくするのです。
逆にいえば、シナリオを使ってデザインすることで、ユーザーにとって心地良い商品/サービスの利用体験をデザインすることができるのです。

シナリオを使ったデザインのフロー

さて、シナリオを使って商品/サービスの要件を抽出するための作業の流れは、下図のようになります。

  1. 調査に基づくユーザーモデルであるペルソナを作成
  2. 作成したペルソナ文書を元に ペルソナの期待をブレインストーミングにより抽出
  3. ペルソナの期待に応えるサービスイメージをシナリオで表現
  4. 作成したシナリオからサービス要件を抽出

1.のステップは前回説明したとおりです。
そのステップのなかで、現在のユーザーがどのように商品/サービスを利用して、どんなことを感じているのかを、現状の利用シナリオとして描いておくと、次以降のステップで理想のシナリオを考える際の参考になります。前回の最後に「前提条件/制約条件」をペルソナ文書には記述すると書きましたが、それを現状の利用シナリオとして記述しておくとよいでしょう。
もちろん、現状の利用シナリオは、コンテキスチュアル・インクワイアリーやその解釈であるワークモデル分析を元に描きます。

1.で作成したペルソナ文書を元に、ペルソナがどんな期待を持っているか、それを叶えるためにはどんなアイデアがあるかをブレインストーミングで議論します。
ペルソナ文書には、ペルソナの「役割」「目的」「ゴール」が描かれています。その記述をもとに、ペルソナにとって「○○(商品/サービス)とは何か?」「商品/サービスを利用する時の直接的ゴール(例えば、電子ファイルが印刷できる/東京からニューヨークまで移動できる etc.)とは別に、満たしたいと思っていること(例えば、紙づまりや用紙の補給などなく自分のデスクからすべての操作ができる/飛行機のなかや搭乗ロビーなどで快適に過ごせる etc.)」を議論するのです。そして、ペルソナの期待が明らかにできたら、その期待に応えるためには商品/サービスはどうあるべきかを考えるのです。

常に「使っているシーン」を思い浮かべながら

その議論をはじめるあたりから徐々にシナリオを考えていくとよいでしょう。ペルソナが商品/サービスを利用する際の理想のシナリオを、です。

この時点でシナリオを用いるのは、先にも書いたように、使えれば理想的だけど、使われない機能を作らずに済むようにするためです。

例えば、映画のチケットをWebで予約する際、見たい映画(作品)から先に選ぶ人もいれば、見ようと思っている映画館から先に選ぶ人もいます。
作品から選ぶ人には、作品を選んだあと、どこで見るかを選択させることになりますし、映画館を先に選ぶ人には、そのあとにどの作品を観るか(シネマコンプレックスのような複数の作品を同時上映している映画館を想定)を選択してもらいます。
ところがWebサイトが、映画作品を選ぶ→映画館を選ぶ→日時を選ぶといった1つの流れだけを想定した設計になっていると、映画館を選んだ人は、観ようと思っている映画館のページから作品を選んだあと、もう一度、どの映画館で観るかを選択しなくてはいけないことになります。これは「持ち帰りでホットコーヒーをトールで1つ」と頼んだのに「店内でお召し上がりですか?」と訊かれているようなもので、ちょっといらっとさせられるフローです。
どちらでも用は足せますが、ユーザー経験としてはどうでしょう?

ほかにも利用シーンをきちんとイメージせずにデザインしてしまったがために、使えなかったり、使いづらかったり、不快に感じてさせたりする商品/サービスになってしまうことは少なくありません。
ベッドで横になりながらメールを見ようと思ったのに、iPhoneの画面がくるくる回転してしまったことにイライラさせられたというiPhoneユーザーの方は多いのではないでしょうか。これも横になりながら利用するというシナリオが想定されていなかったがゆえではないかと思います。

シナリオを描く際の7つの着眼点

では、どのようなことをイメージしながら、シナリオを描けば良いのか?
以下は、コンテキスチュアル・インクワイアリーなどの行動観察の際に重視される「7つの着眼点」ですが、これはシナリオを描く際にもどう記述するかの参考になる視点です。

類型的行動
人が行動を行う際の1つの単位となるもの。
たとえば、通勤、料理、ミーティング、読書、情報収集、旅行の計画、etc.
また、その人自身がその行動を言葉でどう認識しているか。
行動の状況
人が行動を行う際の物理的環境や文化的背景、経済状況。
行動の直接的要因やきっかけ。
行動の主体
行動を行う主体は誰か。個人か、集団か、法人か。
どんな役割を担っているのか。
行動の対象
行動の対象となる人、あるいは物は何か。
その対象は主体にとってどんな意味を持っているのか。
手段・方法
行動の主体はどのような手段や方法を用いて、自身の行動の目的を達しようとするか。
用いられる道具、利用されるメソッド、考え方、etc.
行動の目的
行動の主体は何を目的として行動を行うのか。
具体的なゴールとして何を手に入れようとしているのか。
行動の結果
行動の結果、主体は自身の目的を達せられたかどうか。
その結果は、主体をどのような気分にさせたか。

こうした視点でペルソナの行動をイメージしながら、いくつかの利用シーンでシナリオを描きます。
そこに描かれている商品/サービスがペルソナにとっての理想の商品/サービスですから、そこに描かれた商品/サービスの機能や振る舞いは、実際の商品/サービスも満たしていることが望ましいわけです。つまり、それが商品/サービスの要件となる。このような形でシナリオを使って、商品/サービスの要件を捉えていくのがシナリオ・デザインという手法です。

関連情報

関連エントリー